Excelで道路照明灯基礎の設計計算【まとめ】
これまで設計計算例を4つ記事にしましたので、その比較と特徴について紹介します。
計算結果の比較
ポールが路面高12mの「直線型テーパーポール 可変型 ベース式埋設型」の道路照明について、基礎の設計計算してみた結果が下記の表です。
参考にした基準書 | 基礎寸法 | 備考 |
---|---|---|
標準 | φ500×1900 | |
S50建設省通知 | 800×800×1500 | |
JIL1003:2009 & 土木研究所資料第1035号 | 600×600×1800 1000×1000×1200 1200×1200×1000 |
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H24近畿地整の設計便覧(案)の直接基礎 | 1300×1300×650 | 鉛直支持力のみを照査 |
R2道路標識構造便覧の直接基礎 | 同上 | 鉛直支持力、転倒、滑動、水平支持力、部材 を照査 |
各設計方法の特徴
S50建設省通知
昭和50年7月15日付け道企発第52号「道路附属物の基礎について」に基づいて照明灯の基礎を設計した場合の特筆すべき特徴は、国土交通省が「全国を対象」として定めている設計方法であることと、もっとも簡単に設計できるという点です。
ただし、デメリットとして、選定できる基礎の平面形状が、「500×500」と「800×800」の2種類しかないことが挙げられます。
基礎寸法を標準から変える理由のほとんどは、地中の障害物を避けるためですが、平面形状「800x800」の場合の基礎深さで障害物を避けきれない場合は、この設計方法は採用できなくなります。
つまり、「最初にS50建設省通知で設計してみて、その結果で問題解決できないなら、JIL1003:2009 & 土木研究所資料第1035号の設計に進む」ということになります。
JIL1003:2009 & 土木研究所資料第1035号
JIL 1003:2009「照明用ポール強度計算基準」と、建設省土木研究所資料第 1035 号「ポール基礎の安定計算法」を使った設計方法は、国の通知や通達で認められた設計方法ではありませんが、国土交通省の出先機関である近畿地方整備局のWebサイトで公開されている「設計便覧(案)ー第4編電気通信編ー第4章道路照明設備ー第4節 照明柱等基礎」に記載されています。
このため、この設計方法について照明灯管理者の承認を得てから設計を進めるべきでしょう。
この設計方法のメリットは、S50建設省通知と同じ考え方でありながら、選定できる基礎の平面形状が「300x300」から「1200x1200」まであることです。
選択肢に幅があるので、ほとんどの場合、現場の状況にあった基礎形状を選ぶことが可能と言えるでしょう。
JIL 1003:2009「照明用ポール強度計算基準」と、建設省土木研究所資料第 1035 号「ポール基礎の安定計算法」を使った設計方法よりも更に根入れを小さくし、根入れ長さと基礎短辺幅の比が1/2以下となる基礎形状の場合は「直接基礎」として設計することになります。
H24近畿地整の設計便覧(案)に基づく直接基礎
近畿地方整備局がWebサイトで公開している「設計便覧(案)ー第4編電気通信編ー第4章道路照明設備ー第4節 照明柱等基礎」には、直接基礎の設計方法が記載されていますが、「鉛直支持力のみ照査」していることに注意が必要です。
国の出先機関が公開している資料とはいえ、「転倒」、「滑動」、「水平支持力」の安定照査と、「部材」の照査をせずに設計するのは疑問が残ります。
この設計方法を採用する場合は、事前に照明灯の管理者に「照査が鉛直支持力しかないこと」について説明し、承諾を得てから設計を進めるべきでしょう。
もし、すべての照査項目を要求される場合は、「R2道路標識構造便覧」に基づく設計方法を採用することになります。
R2道路標識構造便覧に基づく直接基礎
「鉛直支持力」、「転倒」、「滑動」、「水平支持力」の安定照査と、「部材」の照査をすべて網羅している直接基礎の設計方法となります。
照明灯の基礎を設計するのに、「標識」の基準書を参照することになるため、照明灯管理者に承諾を得ておく必要があります。
ただ、国の出先機関である中部地方整備局がWebサイトで公開している「道路設計要領(設計編) -第8章交通安全施設-」では、p.8-54に「道路標識設置基準・同解説(社)日本道路協会,S62.1」の設計計算例で基礎の設計が可能である旨が記載されています。
よって、「道路標識設置基準・同解説(社)日本道路協会,S62.1」の改訂版である「R2道路標識構造便覧」を設計方法に採用することは、承諾されやすいでしょう。
注意点:設計条件の確認
すべての計算例には、「N値10」、「許容支持力100kN/m²」という設計条件があります。
この2つの条件の関係については、R2道路標識構造便覧のp.116に「許容地耐力は、砂質地盤でN値10程度であれば、建築基準法施行令第93条 砂質地盤の数値を適用するのが一般的である」と記載されており、この数値が「長期50kN/m²、短期100kN/m²」となっています。
よって、N値10未満の場合は、平板載荷試験などで支持力を確認する必要があります。
もし、試験結果の許容支持力が100kN/m²より小さい場合は、「地盤改良」、「杭基礎設計」といった対策が考えられます。
エクセルブック
すべての設計計算例を記載したエクセルブックは下記からダウンロードしてください。
もし、間違いなどを見つけられた場合は、ご連絡いただけると幸いです。