この記事では、道路照明灯の基礎をエクセルで設計計算してみた結果をご紹介します。

地中の障害物などで、標準的な基礎が設置できない場合に、基礎の形状をすぐに変更設計できるように作ったものの一つです。

基礎の設計方法はいくつかありますが、今回紹介する設計方法は、昭和50年の建設省(現:国土交通省)通知を元にしています

1. 設計方法

昭和50年7月15日付け道企発第52号「道路附属物の基礎について」の「4.基礎の寸法 2)」より、基礎の天端に作用する水平力と曲げモーメントを計算したうえ、表-5によって基礎の寸法を定める

設計の流れは下記フローチャートのとおりです。

📌NOTE
  • 古い通知ですが、国土交通省道路局のWebサイトに掲載されていることから、設計の考え方としては現在でも利用可能です
  • ただし、表1はもう使えません。例えば、地上高さ12mの照明灯の基本形における基礎の根入れ長さは210cmとなっていますが、2014年に国土交通省は標準根入れ長を190cmに変更しています。

2. 設計条件

地盤は自重に対して安定であるとする。(N値10程度の砂質地盤相当)

器具は「車道用の道路照明灯」とし、設計風速は「$V=60 \ \mathrm{m/sec}$」とする。

支柱は「直線型テーパーポール 可変型 ベース式埋設型」とし、その形状寸法は、JIL1001:2019「照明用テーパーポール(鋼製)」p.24の「IA12.3B-C」のとおりとする。

路面高 $h_1$ $h_2$ $h_3$ $d_1$ $d_2$ $d_3$ $d_4$
12,000 2,500 8,000 1,500 75 75 195 195

出所:JIL1001:2019「照明用テーパーポール(鋼製)」(単位:mm)

📌NOTE

3. 単位面積当たりの風荷重pの計算

$$ p=\frac{1}{16} \cdot V^2 \cdot CD $$
  • $p$:有効投影面積当り風荷重(kg/m²)
  • $V$:設計風速(m/sec)
  • $CD$:抗力係数(支柱0.7、板1.2)

道路照明灯の器具について抗力係数を「板」に相当するとして「$CD=1.2$」とする。

よって、単位面積当たりの風荷重は次のとおり。

  • $p$ (器具) $\displaystyle =\frac{1}{16} \times 60^2 \times 1.2 =270.0$ kg/m²
  • $p$ (支柱) $\displaystyle =\frac{1}{16} \times 60^2 \times 0.7 =157.5$ kg/m²
📌NOTE
  • 標識や照明灯などの道路附属物は、風荷重に対する安定計算により基礎の寸法が決まります。
  • この風を受ける対象物の形が様々なため、形状に関して補正するのが抗力係数です。
  • 照明器具は標識板のように平らになっていませんので、器具の抗力係数を「1.2」にするとやや大きめの風荷重になります。

4. 基礎の天端に作用する水平力Hの計算

水平力の計算式は「水平力 $H$ =受圧面積 $H$ x 単位面積当たりの風荷重 $p$ 」である。

よって、次表のとおり計算され、基礎の天端に作用する水平力$H$は「280.81 kg」となる。

部位 受圧面積計算式 受圧面積
$A$
(m²)
風荷重
$p$
(kg/m²)
水平力
$H$
(kg)
器具 JIL1001:2019のp.5 0.13 270.0 35.10
支柱上段 $h_1 \cdot d_2$ 0.19 157.5 29.93
支柱中段 $\displaystyle h_2 \cdot \frac{d_2 + d_3}{2}$ 1.08 157.5 170.10
支柱下段 $h_3 \cdot d_4$ 0.29 157.5 45.68
合計 280.81
📌NOTE
  • 器具の受圧面積は、JIL1001:2019「照明用テーパーポール(鋼製)」p.5の解説表 1より「0.13m²」としましたが、最近の灯具はLEDになって小型化しており、その受圧面積もより小さくなっています。
  • 今回の計算例は、抗力係数も受圧面積も大きめの値を採用し、より安全性の高いものとなっています。
  • ただし、過大な設計とも言えますので、各数値を実際に設置するものに置き換えて経済的な基礎(つまり小さい基礎)にしても良いでしょう。

5. 基礎の天端に作用する曲げモーメントMの計算

曲げモーメントの計算式は「曲げモーメント$M$=アーム長$L$ x 水平力$H$」である。

よって、次表のとおり計算され、基礎の天端に作用する曲げモーメント$M$は「1,696.64 kg・m」となる。

部位 アーム長の計算式 アーム長
$L$
(m)
水平力
$H$
(kg)
曲げモーメント
$M$
(kg・m)
器具 $h_1 + h_2 + h_3 + 300$ 12.30 35.10 431.73
支柱上段 $\displaystyle \frac{ h_1}{2} + h_2+ h_3 + 300$ 11.05 29.93 330.73
支柱中段 $\displaystyle h_2 \cdot \frac{d_3 + 2 \cdot d_2}{ 3 \cdot (d_3 + d_2)}+ h_3 +300$ 5.21 170.10 886.22
支柱下段 $\displaystyle \frac{ h_3 }{2}+300$ 1.05 45.68 47.96
合計 280.81 1,696.64
📌NOTE
  • アーム長の計算式のうち、支柱中段が見慣れない公式となっていますが、これは支柱中段が台形になっているためです。
  • 台形の重心を求める公式については、インターネットで検索すると簡単に見つかりますので、そちらに解説は譲ります。

6. 基礎の選定

以上より、基礎の天端に作用する水平力$H$と曲げモーメント$M$は、

  • 水平力$H=280.81\ \mathrm{kg} = 0.28\ \mathrm{t}$
  • 曲げモーメント$M=1,696.64\ \mathrm{kg \cdot m} = 1.7\ \mathrm{t \cdot m}$

となるので、昭和50年7月15日付け道企発第52号「道路附属物の基礎について」の表5において、$H=0.3$と$M=1.8$での根入れ長さが適用可能となるため、

  • 基礎寸法 80cm x 80cm x 150cm

となる。

📌NOTE
  • 昭和50年の通知には、表5をどのようにして計算したのかが明記されていません。
  • しかし、色々な文献を読む限り「建設省土木研究所資料1035号 ポール基礎の安定計算法 1975」によるものだと考えられます。
  • この資料はWebで公開されていませんが、土木研究センターのコピーサービスで入手可能です。

7. エクセルブック

計算を記載したエクセルブックは下記からダウンロードしてください。

DOWNLOAD

もし、間違いなどを見つけられた場合は、ご連絡いただけると幸いです。

なお、今回の設計方法では、基礎寸法が一択になってしまい、地中の障害物を避けきることができない場合も想定されます。

この問題は、下記の記事で解決策をご紹介しています。

Excelで道路照明灯基礎の設計計算 -JIL1003:2009、土研第1035号-

Excelで道路照明灯基礎の設計計算 -JIL1003:2009、土研第1035号-

この記事では、道路照明灯の基礎をエクセルで設計計算してみた結果をご紹介します。ここで紹介する設計計算例では、平成24年に近畿地方整備局が発行した設計便覧(案)に基づいています。