Excelでもたれ式擁壁(直接基礎)の設計計算 -岩盤、ガードレールC種-
この記事では、道路に設置される「もたれ式擁壁(直接基礎)」をエクセルで設計計算した結果をご紹介します。
設計の考え方とフローチャート
これから解説する内容は、社団法人日本道路協会が平成24年7月に発行した道路土工擁壁工指針(以下、H24道擁という。)に基づいている。
今回の紹介する設計プロセスは「岩盤、直接基礎、擁壁上の嵩上げ盛土なし、地下水なし、擁壁高さ8m以下」が適用範囲である。(H24道擁p27, 89)
下記の画像は、設計のフローチャートである。
1. 設計条件
1-1. 形状寸法
- 擁壁高:$H=6.000\ \mathrm{m}$
- 天端幅:$b=0.800\ \mathrm{m}$
- 底面幅:$B=1.400\ \mathrm{m}$
- 前面勾配:$n_f=0.500$
- 背面勾配:$n_r=0.400$
- 擁壁1ブロックの延長:$L=10\ \mathrm{m}$
1-2. コンクリート規格
- 設計基準強度:$\sigma_{ck}=18\ \mathrm{N/mm^2}$
- 単位体積重量:$\gamma_c=23\ \mathrm{kN/m^3}$(H24道擁p52)
- 無筋コンクリートの許容圧縮応力度
- 常時:$\sigma_{ck}/4=4.50\ \mathrm{N/mm^2}$(H24道擁p81)
- 地震時・衝突時:$\sigma_{ck}/4 \times 1.5 =6.75\ \mathrm{N/mm^2}$(H24道擁p78)
- 無筋コンクリートの許容曲げ引張応力度
- 常時:$\sigma_{ck}/80=0.23\ \mathrm{N/mm^2}$(H24道擁p83,143)
- 地震時・衝突時:$\sigma_{ck}/80 \times 1.5 =0.34\ \mathrm{N/mm^2}$(H24道擁p78)
- 無筋コンクリートの許容せん断応力度:$\sigma_{ck}/100+0.15=0.33\ \mathrm{N/mm^2}$(H24道擁p83,144)
1-3. 裏込め材料
- 裏込め土:砂質土
- せん断抵抗角:$\phi=30\ \mathrm{° }$(H24道擁p66)
- 単位体積重量:$\gamma_s=19\ \mathrm{kN/m^3}$(H24道擁p66)
- 粘着力:$c=0\ \mathrm{kN/m^2}$
1-4. 支持地盤
- 土質:岩盤(軟岩・土丹)
- 底面と地盤の摩擦係数:$\mu=0.7$(H24道擁p70)
- 付着力:$c_B=0\ \mathrm{kN/m^2}$(H24道擁p70)
- 許容鉛直支持力度(常時):$q_a=300\ \mathrm{kN/m^2}$(H24道擁p68,69)
- 許容鉛直支持力度(衝突時):$q_a=450\ \mathrm{kN/m^2}$(H24道擁p68,69,163)
- 中間層に軟弱な土層あるいは液状化が懸念されるゆるい砂質土層:なし
1-5. 上載荷重と地下水位
- 上載荷重:$q=10\ \mathrm{kN/m^2}$(H24道擁p53)
- 地下水位:なし
1-6. 付属施設
- 車両用防護柵:Gr-C種(H24道擁p213)
- 固定方法:砂詰め固定
- 衝突荷重:$P_g=30\ \mathrm{kN}$(H24道擁p62)
- 作用位置:$h_g=0.600\ \mathrm{m}$
- 衝突車両の前輪荷重:$W_g=25\ \mathrm{kN}$(H24道擁p63)
- 支柱中心部(作用位置)から天端前面までの距離:$b_g=0.400\ \mathrm{m}$
1-7. 重要度区分と要求性能
擁壁は、その重要度に応じて設計照査の方法(耐震設計の基本方針)を区分している。(H24道擁p42)
- 重要度1:万が一損傷すると交通機能に著しい影響を与える場合、あるいは隣接する施設に重大な影響を与える場合
- 重要度2:重要度1に該当するもの以外
この設計計算例では、「重要度2」とする。
📌NOTE |
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擁壁の要求性能とは、「擁壁の壊れにくさ」を定義しており、例えば「性能1」であれば、大震災後でも、健全性が保たれ道路を通行することができるほど壊れにくいということである。
要求性能は、3段階に区分されている。
- 性能1:擁壁としての健全性を損なわない
- 性能2:損傷が限定的なものにとどまり、擁壁としての機能の回復が速やかに行い得る
- 性能3:損傷が擁壁として致命的とならない
この設計計算例では、重要度より要求性能を下記のとおり決定する。(H24道擁p44)
- 常時の作用:性能1
- 降雨の作用:性能1
- レベル1地震動の作用:性能2
- レベル2地震動の作用:性能3
📌NOTE |
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1-8. 設計方法と照査方法
設計方法は、「H24道擁の第5章に示した慣用的な設計方法(慣用法)」とする。
照査は、「擁壁の安定性」、「部材の安全性」、「排水工、付帯工」の3つに分けて行う。(H24道擁p88)
1-8-1. 擁壁の安定性
「擁壁の安定性」は、さらに「擁壁自体の安定性」、「背面盛土及び基礎地盤を含む全体としての安全性」に分けられる。
1-8-1-1. 擁壁自体の安定性の照査
「擁壁自体の安定性」について、H24道擁の第5章に示した慣用的な設計方法・施工方法に従えば、所要の性能を確保するとされており、例えば「常時の作用に対して性能1」を満足するとみなしてよいとされている。(H24道擁p88)
また、擁壁高$H \leqq 8\mathrm{m}$の場合、「常時の作用で照査」すれば、「レベル1地震動の作用に対して性能2」、「レベル2地震動の作用に対して性能3」を満足するとされている。(H24道擁p89)
よって、今回は「擁壁高$H \leqq 8\mathrm{m}$」かつ、「重要度2」であるため、「レベル1地震動の作用」と「レベル2地震動の作用」に対する安定性照査は不要となる。
さらに、今回は「地下水位がないこと」、および「排水工を適切に設置すること」を前提とし、「水圧の影響を考慮しない」こととする。(H24道擁p55)
このため、「降雨の作用」については、通常、常時の作用における荷重の一項目として扱うが、今回はその荷重がないため、降雨に作用に対する照査を省略する。(H24道擁p49,88)
一方、擁壁天端に防護柵が設置されているため、「その他の作用(衝突時)で照査」が必要となる。
1-8-1-2. 背面盛土及び基礎地盤を含む全体としての安定性
「背面盛土及び基礎地盤を含む全体としての安定性」については、「1-4.支持地盤」に示したとおり、検討を要する層がないため、検討は不要となる。(H24道擁p111)
1-8-2. 部材の安全性
部材の安全性についても、擁壁の安定性と同様に、H24道擁の第5章に示した慣用的な設計方法・施工方法に従えば、所要の性能を確保するとされている。
擁壁を構成する部材の定義は、「躯体、底版及び杭等」とされている。(H24道擁p142)
底版と杭を有しないもたれ式擁壁の場合、部材の安全性照査は躯体のみであり、照査断面位置を固定端とする片持ばりとして設計・照査する。(H24道擁p166)
1-8-3. 排水工、付帯工
排水工は、上述の降雨による照査が不要となるようH24道擁p203の「5-9 排水工」に従い適切に設計するとこととする。
付帯工は、H24道擁p212の「5-10 付帯工」に従い設計することとする。
1-8-4. まとめ
まとめると、今回の設計例での設計方法と必要な照査は以下のとおり。
- 設計方法:H24道擁の第5章に示した慣用的な設計方法(慣用法)
- 照査方法
- 擁壁の安定性の照査
- 擁壁自体の安定性の照査
- 常時の作用で照査:要
- 降雨の作用で照査:不要
- レベル1地震動の$k_h$で照査:不要
- レベル2地震動の$k_h$で照査:不要
- その他の作用(衝突時)で照査:要
- 背面盛土及び基礎地盤を含む全体としての安定性の検討:不要
- 擁壁自体の安定性の照査
- 部材の安全性の照査:要
- 排水工、付帯工:適切に設計する
- 擁壁の安定性の照査
1-9. 照査のおける荷重の組み合わせ
照査は、「常時」と「衝突時」のみ行うこととする。
衝突時には上載荷重を考慮しないため、下表のとおりの荷重の組み合わせとする。(H24道擁p51)
自重 | 上載荷重 | 土圧 | 衝突荷重 | |
---|---|---|---|---|
常時 | 有り | 有り | 有り | - |
衝突時 | 有り | - | 有り | 有り |
📌NOTE |
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1-10. 照査における許容値
照査に用いる許容値は以下のとおりとする。(許容鉛直支持力度は「1-4. 支持地盤」より再掲)
常時 | 衝突時 | |
---|---|---|
転倒に対する安定条件(H24道擁p112,162) | $\displaystyle d > \frac{B}{2}$ | $\displaystyle d \geqq \frac{B}{3}$ |
滑動に対する安全率(H24道擁p113,162) | 1.5 | 1.2 |
許容鉛直支持力度(H24道擁p68,69,163) | 300 kN/m² | 450 kN/m² |
許容変位(H24道擁p110) | 省略 | 省略 |
📌NOTE |
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2. 設計に用いる荷重
2-1. 自重
重心は、0点からの距離とし、水平方向$x$とする。
全体①から、三角形②③を引いて、面積 を算出する。
区分 | 幅 (m) |
高さ (m) |
面積 $A$ (m²) |
0点からの距離 $x$ (m) |
断面一次モーメント $Ax$ (m³) |
---|---|---|---|---|---|
① | 3.800 | 6.000 | 22.800 | 1.900 | 43.320 |
② | 3.000 | 6.000 | -9.000 | 1.000 | -9.000 |
③ | 2.400 | 6.000 | -7.200 | 3.000 | -21.600 |
Σ | 6.600 | 12.720 |
擁壁の重心位置(水平方向の0点からの距離)は、下式により求められる。
自重$W_c$は、擁壁の断面積$A$に、コンクリートの単位体積重量$\gamma_c$を乗じて算出する。
2-2. 衝突荷重
衝突荷重は、水平力と鉛直力の2つに分けて算出する。
2-2-1. 水平力
この車両1台あたりの衝突荷重$P_g$を擁壁の1ブロック延長$L$で除して、単位幅あたりの衝突荷重$p_g$を算出する。
次に、擁壁底面から作用位置までの鉛直距離$y_g$を算出する。
「1. 設計条件」で定めたとおり、擁壁の高さ$H$に作用位置の高さ$h_g$を加える。
2-2-2. 鉛直力
鉛直力は、車両1台あたりの衝突車両の前輪荷重$W_g$を擁壁の1ブロック延長$L$で除して、単位幅あたりの衝突荷重$w_g$として算出する。 次に、擁壁前面から作用位置までの水平距離$x_g$を算出する。
2-3. 土圧
2-3-1. 常時
主働土圧は、試行くさび法によって算出する。(H24道擁p100)
擁壁上の盛土が平坦な場合(嵩上げ盛土がない場合)は、主働土圧合力は下式で算出できる。(H24道擁p101)
- $P$:主働土圧合力(kN/m)
- $W$:上載荷重を含んだ土くさび重量(載荷重を含む)(kN/m)
- $b_u$:土塊上の上載荷重の作用幅(m)
- $\omega$:仮定したすべり面と水平面のなす角(° )
- $\phi$:裏込め土のせん断抵抗角(° )
- $\alpha$:壁背面と鉛直面のなす角(鉛直面より左回り正)(° )
- $\alpha= \tan^{-1}n_r=\tan^{-1}0.4=-21.8$
- $\delta$:壁面摩擦角(° )
- $\displaystyle \delta = \frac{2}{3}\cdot \phi = \frac{2}{3}\times 30 =20$(H24道擁p99)
📌NOTE |
---|
|
よって、
すべり角$\omega$を変化させて、主働土圧合力$P$の最大値を求める。
上の式を用いて、表計算すると下記のとおりとなる。
すべり角 $\omega$ (° ) |
上載幅 $b_u$ (m) |
土くさび重量 $W$ (kN/m) |
主働土圧合力 $P$ (kN/m) |
---|---|---|---|
45 | 3.600 | 241.200 | 65.210 |
46 | 3.394 | 227.407 | 65.833 |
47 | 3.195 | 214.071 | 66.116 |
48 | 3.002 | 201.162 | 66.069 |
49 | 2.816 | 188.653 | 65.702 |
よって、土圧合力が最大となるすべり角は
その時の主働土圧合力は
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
2-3-2. 衝突時
常時と同様に主働土圧は、試行くさび法によって算出する。
ただし、「1-9. 照査における荷重の組み合わせ」のとおり上載荷重$q=0$とする。
よって、
すべり角$\omega$を変化させて、主働土圧合力$P$の最大値を求める。
すべり角 $\omega$ (° ) |
上載幅 $b_u$ (m) |
土くさび重量 $W$ (kN/m) |
主働土圧合力 $P$ (kN/m) |
---|---|---|---|
45 | 3.600 | 205.200 | 55.477 |
46 | 3.394 | 193.466 | 56.007 |
47 | 3.195 | 182.120 | 56.248 |
48 | 3.002 | 171.138 | 56.208 |
49 | 2.816 | 160.496 | 55.895 |
よって、土圧合力が最大となるすべり角は
その時の主働土圧合力は
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
3. 擁壁の安定性の照査
擁壁自体の安定性を照査する。
3-1. 常時
3-1-1. 作用力の集計
照査にあたり、作用力を集計する。
自重と土圧について、上記のとおり鉛直力と水平力をそれぞれ算出しましたので、作用位置までの距離を乗じて、モーメントを算出する。
鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | |||
---|---|---|---|---|---|---|
$V$ | $H$ | $x$ | $y$ | $M_x = V \cdot x$ | $M_y = H \cdot y$ | |
(kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | |
自重 | 151.800 | 0.000 | 1.927 | ― | 292.560 | 0.000 |
土圧 | -2.077 | 66.083 | 2.200 | 2.000 | -4.569 | 132.166 |
合計 | 149.723 | 66.083 | ― | ― | 287.991 | 132.166 |
3-1-2. 転倒に対する照査
作用力の合力位置は、底面つま先から合力の作用点までの水平距離であり、次のとおり求められる。(H24道擁p117) 「1. 設計条件」で定めた「転倒に対する安定条件」のとおり、安定に必要な合力位置は擁壁底面の中央より後方であるため、許容最小距離は次のとおり求められる。
以上より、作用力の合力位置$d=1.041$、許容最小距離$0.700$なので、
よって、転倒に対しては安全である。
3-1-3. 滑動に対する照査
下式のとおり、滑動に対する抵抗力を滑動力で除して、安全率を算出する。(H24道擁p113)
このうち、付着力$c_B=0$であるため、下式のとおり、安全率を算出する。
「1. 設計条件」で定めたとおり、常時においては、滑動に対する安全率$F_{sa}=1.5$である。
よって、滑動に対しては安全である。
3-1-4. 支持に対する照査
作用力の合力位置が擁壁底面幅の1/2より後方にある($d \geqq B/2$)ため、簡便法で計算する(H24道擁p164)
ここに、
- $M_a$:擁壁底面のつま先回りの作用モーメント(kN・m/m)
- $ℓ$:壁面長(m)
- $\theta$:壁面傾斜角(壁面より左回り正)
- $\theta = \tan^{-1} n_r = \tan^{-1} 0.4 = 21.8 \ \mathrm{°}$
- $Q_V$:擁壁底面に発生する鉛直地盤反力(kN/m)
- $Q_H$:擁壁底面に発生する水平地盤反力(kN/m)
- $Q_t$:擁壁背面に発生する壁面地盤反力(kN/m)
- ただし、$d \leqq \kappa_d \cdot B$のとき、$Q_t = 0$
- $q_{v1}$:擁壁底面の前方に発生する鉛直地盤反力度(kN/m²)
- $q_{v2}$:擁壁底面の後方に発生する鉛直地盤反力度(kN/m²)
- $q_t$:擁壁背面に発生する最大壁面地盤反力度(kN/m²)
- $d_p$:擁壁底面のつま先からの鉛直地盤反力の作用位置(m)
- $ℓ_1$:擁壁底面から壁面地盤反力度が発生する位置までの区間長(m)
- $ℓ_2$:壁面地盤反力度が発生する区間長(m)
- $\kappa_ℓ$:壁面地盤反力度が発生する区間長ℓ₂と擁壁壁面長ℓとの比(下表による)
- $\kappa_ℓ=0.60$
- $\kappa_d$:壁面底面のつま先からの鉛直地盤反力度の作用位置$d_p$と擁壁底面幅$B$との比
- $\kappa_d = 0.56$
背面勾配 | 1:0.3 | 1:0.4 | 1:0.5 |
---|---|---|---|
$\kappa_ℓ=ℓ₂/ℓ$ | 0.50 | 0.60 | 0.70 |
📌NOTE |
---|
|
「3-1-2. 転倒に対する照査」より、
また、
「1. 設計条件」で定めたとおり、常時においては、許容鉛直支持力度$q_a=300$である。
よって、
よって、支持に対しては安全である。
3-2. 衝突時
3-2-1. 作用力の集計
照査にあたり、作用力を集計します。
自重、土圧、衝突荷重について、上記のとおり鉛直力と水平力をそれぞれ算出しましたので、作用位置までの距離を乗じて、モーメントを算出します。
鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | |||
---|---|---|---|---|---|---|
$V$ | $H$ | $x$ | $y$ | $M_x = V \cdot x$ | $M_y = H \cdot y$ | |
(kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | |
自重 | 151.800 | 0.000 | 1.927 | ― | 292.560 | 0.000 |
衝突荷重 | 2.500 | 3.000 | 3.400 | 6.600 | 8.500 | 19.800 |
土圧 | -1.767 | 56.220 | 2.200 | 2.000 | -3.887 | 112.440 |
合計 | 152.533 | 59.220 | ― | ― | 297.173 | 132.240 |
3-2-2. 転倒に対する照査
作用力の合力位置は、底面つま先から合力の作用点までの水平距離であり、次のとおり求められる。(H24道擁p117) 「1. 設計条件」で定めた「転倒に対する安定条件」より、許容最小距離は次のとおり求められる。
以上より、作用力の合力位置$d=1.081$、許容最小距離$0.467$なので、
よって、転倒に対しては安全である。
3-2-3. 滑動に対する照査
下式のとおり、滑動に対する抵抗力を滑動力で除して、安全率を算出する。(H24道擁p113)
このうち、付着力cB=0であるため、下式のとおり、安全率を算出する。
「1. 設計条件」で定めたとおり、衝突時においては、滑動に対する安全率$F_{sa}=1.2$である。
よって、滑動に対しては安全である。
3-2-4. 支持に対する照査
常時と同様に、作用力の合力位置が擁壁底面幅の1/2より後方にある($d \geqq B/2$)ため、簡便法で計算する(H24道擁p164)
「3-2-2. 転倒に対する照査」より、
また、
「1. 設計条件」で定めたとおり、衝突時においては、許容鉛直支持力度$q_a=450$である。
よって、
よって、支持に対しては安全である。
4. 部材の安全性の照査
4-1. 常時
4-1-1. 自重
重心は、0点からの距離とし、水平方向$x$とする。
全体①から、三角形②③を引いて、面積$A$と断面一次モーメント$Ax$を算出する。
区分 | 幅 (m) |
高さ (m) |
面積 $A$ (m²) |
0点からの距離 $x$ (m) |
断面一次モーメント
$Ax$ (m³) |
---|---|---|---|---|---|
① | $0.500 h_i +0.800$ | $h_i$ | $0.500 h_i^2 +0.800 h_i$ | $0.250 h_i +0.400$ | $0.125 h_i^3 +0.400 h_i^2 +0.320 h_i$ |
② | $0.500 h_i$ | $h_i$ | $-0.250 h_i^2$ | $0.167 h_i$ | $-0.042 h_i^3$ |
③ | $0.400 h_i$ | $h_i$ | $-0.200 h_i^2$ | $0.367 h_i +0.800$ | $-0.073 h_i^3 -0.160 h_i^2$ |
Σ | $0.050 h_i^2 + 0.800 h_i$ | $0.010 h_i^3 +0.240 h_i^2 + 0.320 h_i$ |
照査断面の幅$B_i$は、下式で算出できる。
擁壁の面積$A$に、コンクリートの単位体積重量$\gamma_c$を乗じて、自重$W_c$を算出する。
高さを変化させて、それぞれの自重、重心、およびモーメントを表計算で求める。
高さ $h_i$ (m) |
面積 $A$ (m²) |
単位体積重量 $\gamma_c$ (kN/m³) |
自重 $W_c=A \cdot \gamma_c$ (kN/m) |
重心 $x_G'$ (m) |
モーメント $M_x=W_c \cdot x_G'$ (kN・m/m) |
---|---|---|---|---|---|
1.000 | 0.850 | 23 | 19.550 | 0.221 | 4.313 |
2.000 | 1.800 | 23 | 41.400 | 0.433 | 17.940 |
3.000 | 2.850 | 23 | 65.550 | 0.639 | 41.918 |
4.000 | 4.000 | 23 | 92.000 | 0.840 | 77.280 |
5.000 | 5.250 | 23 | 120.750 | 1.036 | 125.063 |
6.000 | 6.600 | 23 | 151.800 | 1.227 | 186.300 |
📌NOTE |
---|
|
4-1-2. 土圧
最大の主導土圧合力$P$より、主働土圧係数$K_A$を逆算する。(H24道擁p101)
「2-3-1. 常時」より、
任意位置に作用する土圧強度$p_i$は、土圧強度の定義より下式で算出できる。
任意の位置の土圧合力$P_i$は、下式で算出できる。
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
高さを変化させて、それぞれの作用位置とモーメントを表計算で求める。
高さ | 土圧強度 | 土圧合力 | 鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $p_i$ | $P_i$ | $P_{iV}$ | $P_{iH}$ | $x_i$ | $y_i$ | $M_x = P_{iV} \cdot x_i$ | $M_y = P_{iH} \cdot y_i$ |
(m) | (kN/m²) | (kN/m) | (kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 3.673 | 1.837 | -0.058 | 1.836 | 0.583 | 0.333 | -0.034 | 0.612 |
2.000 | 7.346 | 7.346 | -0.231 | 7.343 | 0.767 | 0.667 | -0.177 | 4.895 |
3.000 | 11.019 | 16.529 | -0.519 | 16.521 | 0.950 | 1.000 | -0.493 | 16.521 |
4.000 | 14.692 | 29.385 | -0.923 | 29.370 | 1.133 | 1.333 | -1.046 | 39.160 |
5.000 | 18.365 | 45.914 | -1.442 | 45.891 | 1.317 | 1.667 | -1.899 | 76.485 |
6.000 | 22.039 | 66.116 | -2.077 | 66.083 | 1.500 | 2.000 | -3.115 | 132.166 |
4-1-3. 壁面地盤反力
前述の「3-1-4.支持に対する照査」と同様、簡便法で計算する。(H24道擁p164)
- $ℓ = 6.462 \ \mathrm{m}$
- $\kappa_ℓ = 0.60$
- $ℓ_2 = 3.877 \ \mathrm{m}$
- $Q_t = 7.121 \ \mathrm{kN/m}$
- $q_t = 3.673 \ \mathrm{kN/m^2}$
- $\theta = 21.8 \ \mathrm{°}$
照査断面位置の壁面地盤反力度$q_t’$は、三角形の相似より下式で算出できる。
壁面地盤反力の合力$Q_{tzi}$は台形の面積なので、下式で算出できる。
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
水平成分
鉛直成分
作用位置
高さを変化させて、それぞれの作用位置とモーメントを表計算で求める。
高さ | $z_i' < ℓ_2$ | 鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $z_i$ | $z_i'$ | or | $Q_{tzi}$ | $Q_{iV}$ | $Q_{iH}$ | $x_{zi}$ | $y_{zi}$ | $M_x = Q_{iV} \cdot x_{zi}$ | $M_y = Q_{iH} \cdot y_{zi}$ |
(m) | (m) | (m) | $z_i'=ℓ_2$ | (kN/m) | (kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 1.000 | 1.077 | $z_i' < ℓ_2$ | 3.407 | -1.265 | 3.163 | 0.661 | 0.527 | -0.836 | 1.666 |
2.000 | 2.000 | 2.154 | $z_i' < ℓ_2$ | 5.714 | -2.122 | 5.306 | 0.951 | 1.128 | -2.019 | 5.986 |
3.000 | 3.000 | 3.231 | $z_i' < ℓ_2$ | 6.923 | -2.571 | 6.428 | 1.293 | 1.857 | -3.324 | 11.938 |
4.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 7.121 | -2.644 | 6.612 | 1.700 | 2.800 | -4.496 | 18.512 |
5.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 7.121 | -2.644 | 6.612 | 2.100 | 3.800 | -5.553 | 25.124 |
6.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 7.121 | -2.644 | 6.612 | 2.500 | 4.800 | -6.611 | 31.736 |
4-1-4. 荷重の集計
自重、土圧、壁面地盤反力を3区分(鉛直力、水平力、モーメント)で集計する。
鉛直力
高さ $h_i$ (m) |
自重 $W_c$ (kN/m) |
土圧 $P_{iV}$ (kN/m) |
壁面地盤反力 $Q_{iV}$ (kN/m) |
合計 $\Sigma V$ (kN/m) |
---|---|---|---|---|
1.000 | 19.550 | -0.058 | -1.265 | 18.227 |
2.000 | 41.400 | -0.231 | -2.122 | 39.047 |
3.000 | 65.550 | -0.519 | -2.571 | 62.460 |
4.000 | 92.000 | -0.923 | -2.644 | 88.433 |
5.000 | 120.750 | -1.442 | -2.644 | 116.663 |
6.000 | 151.800 | -2.077 | -2.644 | 147.079 |
水平力
高さ $h_i$ (m) |
自重 (kN/m) |
土圧 $P_{iH}$ (kN/m) |
壁面地盤反力 $Q_{iH}$ (kN/m) |
合計 $\Sigma H$ (kN/m) |
---|---|---|---|---|
1.000 | 0.000 | 1.836 | 3.163 | 4.999 |
2.000 | 0.000 | 7.343 | 5.306 | 12.648 |
3.000 | 0.000 | 16.521 | 6.428 | 22.949 |
4.000 | 0.000 | 29.370 | 6.612 | 35.982 |
5.000 | 0.000 | 45.891 | 6.612 | 52.503 |
6.000 | 0.000 | 66.083 | 6.612 | 72.695 |
モーメント
高さ | 自重 | 土圧 | 壁面地盤反力 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ |
(m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 4.313 | 0.000 | -0.034 | 0.612 | -0.836 | 1.666 | 3.443 | 2.278 |
2.000 | 17.940 | 0.000 | -0.177 | 4.895 | -2.019 | 5.986 | 15.744 | 10.881 |
3.000 | 41.918 | 0.000 | -0.493 | 16.521 | -3.324 | 11.938 | 38.100 | 28.458 |
4.000 | 77.280 | 0.000 | -1.046 | 39.160 | -4.496 | 18.512 | 71.738 | 57.673 |
5.000 | 125.063 | 0.000 | -1.899 | 76.485 | -5.553 | 25.124 | 117.610 | 101.609 |
6.000 | 186.300 | 0.000 | -3.115 | 132.166 | -6.611 | 31.736 | 176.574 | 163.902 |
4-1-5. 応力度算出と判定
高さごとに、鉛直力、水平力、モーメントを整理し、モーメントの合力を表計算で求める。
高さ | 幅 | 鉛直力 | 水平力 | モーメント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $\Sigma V$ | $\Sigma H$ | $\Sigma M_x$ | $\Sigma M_y$ | $M_a= \Sigma M_y - \Sigma M_x$ |
(m) | (m) | (kN/m) | (kN/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 0.900 | 18.227 | 4.999 | 3.443 | 2.278 | -1.165 |
2.000 | 1.000 | 39.047 | 12.648 | 15.744 | 10.881 | -4.864 |
3.000 | 1.100 | 62.460 | 22.949 | 38.100 | 28.458 | -9.642 |
4.000 | 1.200 | 88.433 | 35.982 | 71.738 | 57.673 | -14.066 |
5.000 | 1.300 | 116.663 | 52.503 | 117.610 | 101.609 | -16.001 |
6.000 | 1.400 | 147.079 | 72.695 | 176.574 | 163.902 | -12.672 |
無筋コンクリート部材断面に生じる圧縮(曲げ引張)応力度は下式で算出できる。(H24道擁143)
- $\sigma_c$:コンクリート断面の縁応力度
- $N$:軸方向力
- $N= \Sigma V \times 1.000$
- $A$:コンクリート全断面積(延長方向は1.0mとする。)
- $A= B_i \times 1.000$
- $e$:偏心距離
- $\displaystyle e = \frac{M_a}{N}$
- $W$:コンクリートの図心軸に関する断面係数
- $\displaystyle W= \frac{1.000 B_i^2}{6}$
よって、縁応力度(圧縮:正、曲げ引張:負)を判定すると、下表のとおり。
高さ | 幅 | 軸方向力 | モーメント | 縁応力度 | 縁応力度 | 判定 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $N$ | $M_a$ | $\sigma_{c1}$ | $\sigma_{c2}$ | $\sigma_{c1}$ | $\sigma_{c2}$ | 圧縮 | 曲げ引張 |
(m) | (m) | (kN) | (kN・m/m) | (kN/m²) | (kN/m²) | (N/mm²) | (N/mm²) | ≦4.50 | ≧-0.23 |
1.000 | 0.900 | 18.227 | -1.165 | 28.879 | 11.626 | 0.029 | 0.012 | OK | OK |
2.000 | 1.000 | 39.047 | -4.864 | 68.229 | 9.866 | 0.068 | 0.010 | OK | OK |
3.000 | 1.100 | 62.460 | -9.642 | 104.593 | 8.970 | 0.105 | 0.009 | OK | OK |
4.000 | 1.200 | 88.433 | -14.066 | 132.301 | 15.087 | 0.132 | 0.015 | OK | OK |
5.000 | 1.300 | 116.663 | -16.001 | 146.550 | 32.932 | 0.147 | 0.033 | OK | OK |
6.000 | 1.400 | 147.079 | -12.672 | 143.848 | 66.264 | 0.144 | 0.066 | OK | OK |
無筋コンクリート部材断面に生じる平均せん断応力度は下式で算出できる。(H24道擁145)
- $\tau_m$:部材断面に生じるコンクリートの平均せん断応力度
- $S$:部材のせん断力
- $S= \Sigma H \times 1.000$
よって、せん断応力度を判定すると、下表のとおり。
高さ | 幅 | せん断力 | せん断応力度 | せん断応力度 | 判定 |
---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $S$ | $\tau_m$ | $\tau_m$ | $\tau_a$ |
(m) | (m) | (kN) | (kN/m²) | (N/mm²) | ≦0.33 |
1.000 | 0.900 | 4.999 | 5.554 | 0.006 | OK |
2.000 | 1.000 | 12.648 | 12.648 | 0.013 | OK |
3.000 | 1.100 | 22.949 | 20.862 | 0.021 | OK |
4.000 | 1.200 | 35.982 | 29.985 | 0.030 | OK |
5.000 | 1.300 | 52.503 | 40.387 | 0.040 | OK |
6.000 | 1.400 | 72.695 | 51.925 | 0.052 | OK |
4-2. 衝突時
4-2-1. 自重
自重は常時と同様であるため、面積、重心、モーメントは下表のとおり。(「4-1-1. 自重」より再掲)
高さ $h_i$ (m) |
面積 $A$ (m²) |
単位体積重量 $\gamma_c$ (kN/m³) |
自重 $W_c=A \cdot \gamma_c$ (kN/m) |
重心 $x_G'$ (m) |
モーメント $M_x=W_c \cdot x_G'$ (kN・m/m) |
---|---|---|---|---|---|
1.000 | 0.850 | 23 | 19.550 | 0.221 | 4.313 |
2.000 | 1.800 | 23 | 41.400 | 0.433 | 17.940 |
3.000 | 2.850 | 23 | 65.550 | 0.639 | 41.918 |
4.000 | 4.000 | 23 | 92.000 | 0.840 | 77.280 |
5.000 | 5.250 | 23 | 120.750 | 1.036 | 125.063 |
6.000 | 6.600 | 23 | 151.800 | 1.227 | 186.300 |
4-2-2. 衝突荷重
衝突荷重は、擁壁端部から1mの位置に作用し45°で下方向に荷重分散させ、水平力と鉛直力の2つに分けて算出する。(H24道擁p61,62)
有効幅を考慮した衝突荷重$P_{gi}$は、下式で算出できる。
- $P_g$:衝突荷重
- $P_g= 30 \mathrm{kN}$
鉛直力
有効幅を考慮した衝突車両の前輪荷重$W_{gi}$は、下式で算出できる。
- $W_g$:衝突車両の前輪荷重
- $W_g= 25 \mathrm{kN}$
作用位置
- $h_g$:擁壁天端から水平力の作用位置までの鉛直距離
- $h_g= 0.600 \mathrm{m}$
高さを変化させて、それぞれの作用位置とモーメントを表計算で求める。
高さ | 鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $W_{gi}$ | $P_{gi}$ | $x_{gi}$ | $y_{gi}$ | $M_x = W_{gi} \cdot x_{gi}$ | $M_y = P_{gi} \cdot y_{gi}$ |
(m) | (kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 12.500 | 15.000 | 0.450 | 1.600 | 5.625 | 24.000 |
2.000 | 8.333 | 10.000 | 0.900 | 2.600 | 7.500 | 26.000 |
3.000 | 6.250 | 7.500 | 1.350 | 3.600 | 8.438 | 27.000 |
4.000 | 5.000 | 6.000 | 1.800 | 4.600 | 9.000 | 27.600 |
5.000 | 4.167 | 5.000 | 2.250 | 5.600 | 9.375 | 28.000 |
6.000 | 3.571 | 4.286 | 2.700 | 6.600 | 9.643 | 28.286 |
4-2-3. 土圧
最大の主導土圧合力$P$より、主働土圧係数$K_A$を逆算する。(H24道擁p101)
「2-3-2. 衝突時」より、
任意位置に作用する土圧強度$p_i$は、土圧強度の定義より下式で算出できる。
任意の位置の土圧合力$P_i$は、下式で算出できる。
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
高さを変化させて、それぞれの作用位置とモーメントを表計算で求める。
高さ | 土圧強度 | 土圧合力 | 鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $p_i$ | $P_i$ | $P_{iV}$ | $P_{iH}$ | $x_i$ | $y_i$ | $M_x = P_{iV} \cdot x_i$ | $M_y = P_{iH} \cdot y_i$ |
(m) | (kN/m²) | (kN/m) | (kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 3.125 | 1.562 | -0.049 | 1.562 | 0.583 | 0.333 | -0.029 | 0.521 |
2.000 | 6.250 | 6.250 | -0.196 | 6.247 | 0.767 | 0.667 | -0.151 | 4.164 |
3.000 | 9.375 | 14.062 | -0.442 | 14.055 | 0.950 | 1.000 | -0.420 | 14.055 |
4.000 | 12.499 | 24.999 | -0.785 | 24.987 | 1.133 | 1.333 | -0.890 | 33.315 |
5.000 | 15.624 | 39.061 | -1.227 | 39.042 | 1.317 | 1.667 | -1.615 | 65.069 |
6.000 | 18.749 | 56.248 | -1.767 | 56.220 | 1.500 | 2.000 | -2.650 | 112.440 |
4-2-4. 壁面地盤反力
前述の「3-2-4.支持に対する照査」と同様、簡便法で計算する。(H24道擁p164)
- $ℓ = 6.462 \ \mathrm{m}$
- $\kappa_ℓ = 0.60$
- $ℓ_2 = 3.877 \ \mathrm{m}$
- $Q_t = 8.400 \ \mathrm{kN/m}$
- $q_t = 4.333 \ \mathrm{kN/m^2}$
- $\theta = 21.8 \ \mathrm{°}$
壁面地盤反力の合力$Q_{tzi}$は台形の面積なので、下式で算出できる。
このとき、土圧合力の水平成分、鉛直成分、作用位置は次のとおりとなる。
水平成分
鉛直成分
作用位置
高さを変化させて、それぞれの作用位置とモーメントを表計算で求める。
高さ | $z_i' < ℓ_2$ | 鉛直力 | 水平力 | 作用位置(アーム長) | モーメント | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $z_i$ | $z_i'$ | or | $Q_{tzi}$ | $Q_{iV}$ | $Q_{iH}$ | $x_{zi}$ | $y_{zi}$ | $M_x = Q_{iV} \cdot x_{zi}$ | $M_y = Q_{iH} \cdot y_{zi}$ |
(m) | (m) | (m) | $z_i'=ℓ_2$ | (kN/m) | (kN/m) | (kN/m) | (m) | (m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 1.000 | 1.077 | $z_i' < ℓ_2$ | 4.018 | -1.492 | 3.731 | 0.661 | 0.527 | -0.986 | 1.966 |
2.000 | 2.000 | 2.154 | $z_i' < ℓ_2$ | 6.741 | -2.503 | 6.259 | 0.951 | 1.128 | -2.381 | 7.061 |
3.000 | 3.000 | 3.231 | $z_i' < ℓ_2$ | 8.167 | -3.033 | 7.583 | 1.293 | 1.857 | -3.921 | 14.082 |
4.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 8.400 | -3.119 | 7.799 | 1.700 | 2.800 | -5.303 | 21.838 |
5.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 8.400 | -3.119 | 7.799 | 2.100 | 3.800 | -6.551 | 29.637 |
6.000 | 3.600 | 3.877 | $z_i' = ℓ_2$ | 8.400 | -3.119 | 7.799 | 2.500 | 4.800 | -7.799 | 37.436 |
4-2-5. 荷重の集計
自重、衝突荷重、土圧、壁面地盤反力を3区分(鉛直力、水平力、モーメント)で集計する。
鉛直力
高さ $h_i$ (m) |
自重 $W_c$ (kN/m) |
衝突荷重 $W_{gi}$ (kN/m) |
土圧 $P_{iV}$ (kN/m) |
壁面地盤反力 $Q_{iV}$ (kN/m) |
合計 $\Sigma V$ (kN/m) |
---|---|---|---|---|---|
1.000 | 19.550 | 12.500 | -0.049 | -1.492 | 30.509 |
2.000 | 41.400 | 8.333 | -0.196 | -2.503 | 47.034 |
3.000 | 65.550 | 6.250 | -0.442 | -3.033 | 68.325 |
4.000 | 92.000 | 5.000 | -0.785 | -3.119 | 93.095 |
5.000 | 120.750 | 4.167 | -1.227 | -3.119 | 120.570 |
6.000 | 151.800 | 3.571 | -1.767 | -3.119 | 150.485 |
水平力
高さ $h_i$ (m) |
自重 (kN/m) |
衝突荷重 $P_{gi}$ (kN/m) |
土圧 $P_{iH}$ (kN/m) |
壁面地盤反力 $Q_{iH}$ (kN/m) |
合計 $\Sigma H$ (kN/m) |
---|---|---|---|---|---|
1.000 | 0.000 | 20.000 | 1.562 | 3.731 | 20.293 |
2.000 | 0.000 | 10.000 | 6.247 | 6.259 | 22.505 |
3.000 | 0.000 | 7.500 | 14.055 | 7.583 | 29.138 |
4.000 | 0.000 | 6.000 | 24.987 | 7.799 | 38.786 |
5.000 | 0.000 | 5.000 | 39.042 | 7.799 | 51.841 |
6.000 | 0.000 | 4.286 | 56.220 | 7.799 | 68.305 |
モーメント
高さ | 自重 | 衝突荷重 | 土圧 | 壁面地盤反力 | 合計 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ | $M_x$ | $M_y$ |
(m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 4.313 | 0.000 | 5.625 | 24.000 | -0.029 | 0.521 | -0.986 | 1.966 | 8.923 | 26.486 |
2.000 | 17.940 | 0.000 | 7.500 | 26.000 | -0.151 | 4.164 | -2.381 | 7.061 | 22.908 | 37.225 |
3.000 | 41.918 | 0.000 | 8.438 | 27.000 | -0.420 | 14.055 | -3.921 | 14.082 | 46.014 | 55.137 |
4.000 | 77.280 | 0.000 | 9.000 | 27.600 | -0.890 | 33.315 | -5.303 | 21.838 | 80.087 | 82.753 |
5.000 | 125.063 | 0.000 | 9.375 | 28.000 | -1.615 | 65.069 | -6.551 | 29.637 | 126.271 | 122.706 |
6.000 | 186.300 | 0.000 | 9.643 | 28.286 | -2.650 | 112.440 | -7.799 | 37.436 | 185.494 | 178.162 |
4-2-6. 応力度算出と判定
高さごとに、鉛直力、水平力、モーメントを整理し、モーメントの合力を表計算で求める。
高さ | 幅 | 鉛直力 | 水平力 | モーメント | ||
---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $\Sigma V$ | $\Sigma H$ | $\Sigma M_x$ | $\Sigma M_y$ | $M_a= \Sigma M_y - \Sigma M_x$ |
(m) | (m) | (kN/m) | (kN/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) | (kN・m/m) |
1.000 | 0.900 | 30.509 | 20.293 | 8.923 | 26.486 | 17.564 |
2.000 | 1.000 | 47.034 | 22.505 | 22.908 | 37.225 | 14.317 |
3.000 | 1.100 | 68.325 | 29.138 | 46.014 | 55.137 | 9.122 |
4.000 | 1.200 | 93.095 | 38.786 | 80.087 | 82.753 | 2.666 |
5.000 | 1.300 | 120.570 | 51.841 | 126.271 | 122.706 | -3.565 |
6.000 | 1.400 | 150.485 | 68.305 | 185.494 | 178.162 | -7.332 |
無筋コンクリート部材断面に生じる圧縮(曲げ引張)応力度は下式で算出できる。(H24道擁143)
- $\sigma_c$:コンクリート断面の縁応力度
- $N$:軸方向力
- $N= \Sigma V \times 1.000$
- $A$:コンクリート全断面積(延長方向は1.0mとする。)
- $A= B_i \times 1.000$
- $e$:偏心距離
- $\displaystyle e = \frac{M_a}{N}$
- $W$:コンクリートの図心軸に関する断面係数
- $\displaystyle W= \frac{1.000 B_i^2}{6}$
よって、縁応力度(圧縮:正、曲げ引張:負)を判定すると、下表のとおり。
高さ | 幅 | 軸方向力 | モーメント | 縁応力度 | 縁応力度 | 判定 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $N$ | $M_a$ | $\sigma_{c1}$ | $\sigma_{c2}$ | $\sigma_{c1}$ | $\sigma_{c2}$ | 圧縮 | 曲げ引張 |
(m) | (m) | (kN) | (kN・m/m) | (kN/m²) | (kN/m²) | (N/mm²) | (N/mm²) | ≦6.75 | ≧-0.34 |
1.000 | 0.900 | 30.509 | 17.564 | -96.202 | 163.999 | -0.096 | 0.164 | OK | OK |
2.000 | 1.000 | 47.034 | 14.317 | -38.870 | 132.937 | -0.039 | 0.133 | OK | OK |
3.000 | 1.100 | 68.325 | 9.122 | 16.879 | 107.349 | 0.017 | 0.107 | OK | OK |
4.000 | 1.200 | 93.095 | 2.666 | 66.470 | 88.689 | 0.066 | 0.089 | OK | OK |
5.000 | 1.300 | 120.570 | -3.565 | 105.403 | 80.090 | 0.105 | 0.080 | OK | OK |
6.000 | 1.400 | 150.485 | -7.332 | 129.935 | 85.043 | 0.130 | 0.085 | OK | OK |
無筋コンクリート部材断面に生じる平均せん断応力度は下式で算出できる。(H24道擁145)
- $\tau_m$:部材断面に生じるコンクリートの平均せん断応力度
- $S$:部材のせん断力
- $S= \Sigma H \times 1.000$
よって、せん断応力度を判定すると、下表のとおり。
高さ | 幅 | せん断力 | せん断応力度 | せん断応力度 | 判定 |
---|---|---|---|---|---|
$h_i$ | $B_i$ | $S$ | $\tau_m$ | $\tau_m$ | $\tau_a$ |
(m) | (m) | (kN) | (kN/m²) | (N/mm²) | ≦0.33 |
1.000 | 0.900 | 20.293 | 22.547 | 0.023 | OK |
2.000 | 1.000 | 22.505 | 22.505 | 0.023 | OK |
3.000 | 1.100 | 29.138 | 26.489 | 0.026 | OK |
4.000 | 1.200 | 38.786 | 32.322 | 0.032 | OK |
5.000 | 1.300 | 51.841 | 39.878 | 0.040 | OK |
6.000 | 1.400 | 68.305 | 48.789 | 0.049 | OK |
エクセルブック
計算を記載したエクセルブックは下記からダウンロードしてください。
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