主働土圧係数とは?

主働土圧係数とは、擁壁背面にある土の水平力によって擁壁が前面方向へ動き始める時の、土の鉛直力に対する水平力の比率である。

土の鉛直力は、土の単位体積重量$\gamma_s$に土の深さ$H$を乗じることで計算できるので、これに主働土圧係数$K_A$を乗じることで、深さ$H$における水平力「主働土圧強度$p_A$」が算出できる。

計算式にすると次のとおり。

$$ \begin{align} p_A=\gamma_s \cdot H \cdot K_A \nonumber \end{align} $$
ここで、
  • $p_A$:主働土圧強度(kN/m²)
  • $\gamma_s$:土の単位体積重量(kN/m³)
  • $H$:土の深さ(m)
  • $K_A$:主働土圧係数

土圧は、深さ比例して増加するので、圧力分布は三角形になる。

このため、深さ$H$の主働土圧合力$P_A$は下式のとおりとなる。

$$ \begin{equation} \begin{split} P_A &=\frac{p_A \cdot H }{2} \\[0.5em] &= \frac{\gamma_s \cdot H^2 \cdot K_A}{2} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

このように、主働土圧係数は擁壁背面の主働土圧合力を算出することに用いる値でもある。

求め方

ランキンの土圧理論

条件として、

  • 擁壁の背面が垂直
  • 擁壁と土の摩擦を無視

であるとき、主働土圧係数は下式のとおりとなる。

$$ \begin{align} K_A= \tan^2 ( 45° - \frac{\phi}{2}) \nonumber \end{align} $$

ここに、

  • $\phi$:内部摩擦角(°)

クーロンの土圧理論

ランキンの土圧理論を一般化したもので、主働土圧係数は下式のとおりとなる。

$$ \begin{align} K_A=\cfrac{\cos^2(\phi-\alpha)}{\cos^2 \alpha \cdot \cos(\alpha + \delta)\left\{ 1+ \sqrt{\cfrac{\sin(\phi+\delta)\sin(\phi-\beta)}{\cos(\alpha + \delta)\cos(\alpha - \beta)}}\right\}^2} \nonumber \end{align} $$
ここに、
  • $\phi$:内部摩擦角(°)
  • $\alpha$:擁壁背面の壁面傾斜角(°)
  • $\delta$:壁面摩擦角(°)
  • $\beta$:地表面の傾斜角(°)

上式に、$\alpha=90$、$\delta=0$、$\beta=0$を代入すると、ランキンの土圧理論と同じ式になります。

このほか、もたれ擁壁の設計では、くさび型の土塊による主働土圧合力から、主働土圧係数を逆算する方法も用いられます。

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