この記事では、土木工事に用いられる仮設土留め壁「2段切ばり式親杭横矢板」をエクセルで設計計算してみた結果をご紹介します。

設計の考え方とフローチャート

設計の考え方は、社団法人日本道路協会が平成11年3月に発行した道路土工仮設構造物工指針(以下、H11道仮という。)に基づいています。

今回紹介する設計プロセスの適用範囲は「掘削深さH=3.0m超え10.0m以下、砂質地盤」です。(H11道仮p.28)

下記の画像は、設計のフローチャートです。クリックすると別ウィンドウで開きます。

📌NOTE
  • 仮設土留の設計フローは、H11道仮p.27にも掲載されていますが、切ばり式親杭横矢板の設計に特化したフローを書いてみました。

1. 設計条件と親杭横矢板・支保工の設定

1-1. 設計条件

1-1-1. 掘削寸法・荷重・地下水位

  • 掘削深さ $H=6.5\ \mathrm{m}$
  • 地下水 なし
  • 親杭間隔 $a=1.5\ \mathrm{m}$
  • 掘削長さ(長辺) $L_e=9.3\ \mathrm{m}$
  • 掘削幅(短辺) $B_e=9.3\ \mathrm{m}$
  • 上載荷重 $q=10.0\ \mathrm{kN/m^2}$

1-1-2. 地盤物性値

地盤の各数値を表にすると下記のとおりです。

層厚
$h$
(m)
土質 地下水

(m)
N値 単位体積重量
$\gamma$
(kN/m³)
水中単位重量
$\gamma\ ^\prime$
(kN/m³)
せん断抵抗角
$\phi$
(度)
粘着力
$c$
(kN/m²)
1層 1.00 砂質土 10 18 27 0
2層 5.00 砂質土 10 18 27 0
3層 0.50 砂質土 75 19 39 62
掘削$\sum$ 6.50 0.00
4層 3.00 砂質土 75 19 39 62

1-2. 親杭の設定

設計条件として、鋼材の型式を「仮に」設定します。今回は、「H-300」にします。

  • 親杭断面寸法:H-300
  • 高さ $H=300\ \mathrm{mm}$(H11道仮p.315より)
  • 幅 $B=300\ \mathrm{mm}$
  • ウェブ幅 $t_1=10\ \mathrm{mm}$
  • フランジ厚 $t_2=15\ \mathrm{mm}$
  • 断面二次モーメント $I= 20,200\ \mathrm{cm^4/m}$
  • 断面係数 $Z=1,350\ \mathrm{cm^3}$
  • 有効断面積 $A_s= 118.4\ \mathrm{cm^2}$
  • 使用鋼材 SS400
  • 軸方向引張許容応力度 $\sigma_{sa}= 210\ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p.47より)
  • せん断許容応力度 $\tau_{sa}= 120\ \mathrm{N/mm^2}$
  • 支圧許容応力度 $ 315\ \mathrm{N/mm^2}$
  • ヤング係数 $E = 200,000\ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p.46より)
  • 断面二次モーメントの有効率(根入れ長の計算): $100$%(H11道仮p.153)
  • 断面二次モーメントの有効率(断面力、変位の計算): $100$%(H11道仮p.107)
  • 断面係数の有効率(応力度の計算): $100$%(H11道仮p.109)

後述する「根入れ長の計算」、「壁体の断面力算定」のいずれかで「NG」となった場合は、この設定を見直すことになります。(フローチャート参照)

H11道路土工仮設構造物工指針p.315には、H型鋼の断面性能が記載されています。設計に必要なところだけ抜粋して表にすると次のとおりです。

高さ
$H$
(mm)

$B$
(mm)
ウェブ幅
$t_1$
(mm)
フランジ厚
$t_2$
(mm)
断面積
$A$
(cm²)
断面二次半径
$r_y$
(cm)
断面二次半径
$r_z$
(cm)
断面係数
$Z$
(cm³)
H-200 200 200 8 12 63.53 8.62 5.02 472
H-250 250 250 9 14 91.43 10.8 6.32 860
H-300 300 300 10 15 118.4 13.1 7.55 1,350
H-350 350 350 12 19 171.9 15.3 8.89 2,280
H-400 400 400 13 21 218.7 17.5 10.1 3,330
📌NOTE
  • H型鋼にはこのほかに、腹起し材と切ばり材に用いられる「リース加工品」と呼ばれる構造材があります。リース材の断面性能はH11道仮p.320に記載されています。
  • リース加工品には「孔」があけられており、断面係数などの数値が異なっています。
  • 間違えないように注意しましょう。

1-3. 横矢板の設定

  • 使用材 米松
  • 許容曲げ応力度 $\sigma_{wa}= 13.5\ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p.54より)
  • 許容せん断応力度 $\tau_{wa}= 1.05\ \mathrm{N/mm^2}$

1-4. 腹起し材の設定

腹起し材は、上段と下段の2段であり、一般部と端部をそれぞれ計算および照査するのが通常である。ただし、この計算例では、簡略化を目的に、上段と下段に同じ断面の鋼材を使用し、一般部と端部も同一の延長として区別しないこととする。

本計算例では下記のとおり設定する。

  • 上段の位置 $G.L.=-1.0\ \mathrm{m}$
  • 下段の位置 $G.L.=-3.8\ \mathrm{m}$
  • 上段の腹起し材 H-350 1本
  • 下段の腹起し材 H-350 1本

なお、H11道路土工仮設構造物工指針p.320には、H型鋼の型式(リース加工製品)が記載されています。設計に必要なところだけ抜粋して表にすると次のとおりです。

高さ
$H$
(mm)

$B$
(mm)
ウェブ厚
$t_1$
(mm)
フランジ厚
$t_2$
(mm)
断面積
$A$
(cm²)
断面二次半径
$r_y$
(cm⁴/m)

$r_y$
(cm⁴/m)
断面係数
$Z$
(cm³/m)
H-200 200 200 8 12 51.53 8.43 4.22 366
H-250 250 250 9 14 78.18 10.60 6.05 708
H-300 300 300 10 15 104.80 12.90 7.51 1,150
H-350 350 350 12 19 154.90 15.10 8.99 2,000
H-400 400 400 13 21 197.70 17.30 10.10 2,950
  • 曲げ引張の許容応力度 $\sigma_{sa}= 210\ \mathrm{N/mm^2}$
  • せん断の許容応力度 $\tau_a= 120\ \mathrm{N/mm^2}$
📌NOTE
  • 曲げ引張の許容応力度を上記で示していますが、この計算例のプロセスでは使用されません。
  • ただし、後述のとおり同じ値が「局部座屈を考慮しない許容曲げ圧縮応力度の上限値」および「圧縮応力を受ける自由突出板の局部座屈に対する許容応力度」として、H11道仮p.51に記載されており、それらは、計算プロセスに登場します

1-5. 切ばり材の設定

切ばり材も腹起し材と同様、上段と下段の2段であり、それぞれ計算および照査する。 このため、本計算例では下記のとおり設定する。
  • 水平間隔 $B=4.50\ \mathrm{m}$
  • 長さ $L=8.60\ \mathrm{m}$
  • 上段 H-300
  • 下段 H-300

ここで、長さ$L$は、掘削幅(短辺)$B_e=9.3\ \mathrm{m}$と、腹起し材の高さ$H=350\ \mathrm{mm}$より、次のとおり計算された値となっています。

$$ \begin{equation} \begin{split} L &=B_e - \frac{2H}{1000} \\[5px] &=9.3 - \frac{2 \times 350}{1000} \\[5px] &=8.60 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

1-6. 火打ちの設定

火打ちも腹起し材と同様、上段と下段の2段であり、それぞれ計算および照査する。 このため、本計算例では下記のとおり設定する。
  • 腹起し方向の幅 $ℓ_2=1.50\ \mathrm{m}$
  • 角度 $\theta=45\ \mathrm{^\circ}$
  • H-300

2. 根入れ長の計算(親杭の長さの決定)

2-1. 根入れ部の土圧および水圧に対する安定から必要となる根入れ長

根入れ長は、「掘削完了時」および「最下段切ばり設置直前」の両者において、それぞれつり合い深さの1.2倍とする。(H11道仮p.87)

つり合い深さ $ℓ_0$ は、極限平衡法を用いて計算する。

2-1-1. 最下段切ばり設置直前

最下段設置時の余掘り量は「1m」とする。(H11道仮p.65)

よって、最下段(2段目)切ばり設置直前の掘削深さは、

$$ \begin{equation} \begin{split} GL &= - 3.8 - 1.0 \\[5px] &= - 4.8\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

となる。

(1) 主働土圧

主働土圧は次の式で求めます。(H11道仮p.35)

$$ \begin{align} p_a & =K_a\ (\sum\gamma\ h+q)-2c\sqrt{K_a}\nonumber \\ K_a & =\tan^2\left(45^\circ \ – \ \frac{\phi}{2}\right)\nonumber \end{align} $$

ここに、

  • $p_a$:主働土圧(kN/m²)
  • $K_a$:主働土圧係数
  • $\sum \gamma\ h$:着目点における地盤の有効土かぶり圧(kN/m²)
  • $\gamma$:各層の土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
    • ただし、地下水位以下では水中単位体積重量 $\gamma\ ^\prime$ とする。
  • $h$:着目点までの各層の層厚(m)
  • $q$:地表面までの上載荷重(kN/m²)
  • $c$:土の粘着力(kN/m²)
  • $\phi$:土のせん断抵抗角(度)

以上をもとに、掘削部の各層の主働土圧を表計算すると次のとおり。

なお、2層は掘削底面の位置で2-1層、2-2層に分割する。

層厚
$h$
(m)
土質 主働土圧係数
$K_a$

$\gamma$
(kN/m³)

$\sum \gamma \ h+q$
(kN/m²)

$c$
(kN/m²)

$2c \sqrt{K_a}$
(kN/m²)

$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}$
(kN/m²)
主働土圧
$p_a$
(kN/m²)
1層 1.00 砂質 0.376 18 10.00
28.00
0 0 3.76
10.53
$p_{a1上}=$ 3.76
$p_{a1下}=$10.53
2-1層 3.80 砂質 0.376 18 28.00
96.40
0 0 10.53
36.25
$p_{a2-1上}=$10.53
$p_{a2-1下}=$ 36.25
2-2層 1.20 砂質 0.376 18 96.00
118.00
0 0 36.25
44.37
$p_{a2-2上}=$ 36.25
$p_{a2-2下}=$ 44.37
3層 $ℓ_0$ 砂質 0.228 19 118.00
19$ℓ_0$+118.00
62 59.21 -32.31
4.33$ℓ_0$-32.31
$p_{a3上}=$ 0.00
$p_{a3下}=$0.00
📌NOTE
  • 3層の主働土圧$p_{a3上}$、 $p_{a3下}$が「0」となっている理由は次のとおりです。
  • $p_{a3上}$は、$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}=-32.31$と負の数になったため、その土圧を無視するため、「0」としています。
  • $p_{a3下}$は、$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}$の値が、4.33$ℓ_0$-32.31であり、層厚$ℓ_0$が7.5m以上でないと負の数となります。
  • 掘削深さ4.8mに対して、根入れがそれほど大きくならないことは経験上分かるので、$p_{a3下}=0$としています。

つづいて、土圧強度を計算します。

掘削底面より上は、主働土圧に作用幅である「親杭間隔」を乗じて、親杭一本が分担する土圧強度を計算します。(H11道仮p.151)

掘削底面より下(つまり、根入れ部)は、作用幅をフランジ幅とします。ただし、N値が10を超える場合は、フランジ幅の2倍とします。なお、この場合、最大値は杭間隔とします。(H11道仮p.88)

主働土圧
$p_a$
(kN/m²)
作用幅
$b$
(m)
土圧強度
$P_a$
(kN/m)
1層 上面
下面
$p_{a1上}=3.76$
$p_{a1下}=10.53$
1.5 $P_{a1上}=5.64$
$P_{a1下}=15.79$
2-1層 上面
下面
$p_{a2-1上}=10.53$
$p_{a2-1下}=36.25$
1.5 $P_{a2-1上}=15.79$
$P_{a2-1下}=54.37$
2-2層 上面
下面
$p_{a2-2上}=36.25$
$p_{a2-2下}=44.37$
0.3 $P_{a2-2上}=10.87$
$P_{a2-2下}=13.31$
3層 上面
下面
$p_{a3上}=0.00$
$p_{a3下}=0.00$
0.6 $P_{a3上}=0.00$
$P_{a3下}=0.00$
(2) 受働土圧

受働土圧は次の式で求めます。(H11道仮p.35)

$$ \begin{align} p_p & =K_p \sum\gamma\ h'+2c\sqrt{K_p} \nonumber \\[5px] K_p & =\tan^2\left(45^\circ \ + \ \frac{\phi}{2}\right) \nonumber \end{align} $$

ここに、

  • $p_p$:受働土圧(kN/m²)
  • $K_p$:受働土圧係数
  • $\sum \gamma\ h’$:着目点における地盤の有効土かぶり圧(kN/m²)
  • $\gamma$:各層の土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
    • ただし、地下水位以下では水中単位体積重量 $\gamma\ ^\prime$ とする。
  • $h’$:着目点までの各層の層厚(m)
  • $q$:地表面までの上載荷重(kN/m²)
  • $c$:土の粘着力(kN/m²)
  • $\phi$:土のせん断抵抗角(度)

以上をもとに、根入れ部の受働土圧を表計算すると次のとおり。

層厚
$h'$
(m)
土質 受働土圧係数
$K_p$

$\gamma$
(kN/m³)

$\sum \gamma \ h'$
(kN/m²)

$c$
(kN/m²)

$2c \sqrt{K_p}$
(kN/m²)

$K_p \gamma h' +2c \sqrt{K_p}$
(kN/m²)
受働土圧
$p_p$
(kN/m²)
2-2層 1.20 砂質 2.66 18 0.00
21.60
0 0 0.00
57.52
$p_{p2-2上}=$ 0.00
$p_{p2-2下}=$ 57.52
3層 $ℓ_0$ 砂質 4.40 19 21.60
19 $ℓ_0$ +21.60
62 259.96 354.89
83.51 $ℓ_0$ + 354.89
$p_{p3上}=$ 354.89
$p_{p3下}=$ 83.51 $ℓ_0$ + 354.89

つづいて、土圧強度を計算します。

受働土圧
$p_p$
(kN/m²)
作用幅
$b$
(m)
土圧強度
$P_p$
(kN/m)
2-2層 上面
下面
$p_{p2-2上}$=0.00
$p_{p2-2下}$=57.52
0.3 $P_{p2-2上}$=0.00
$P_{p2-2下}$=17.26
3層 上面
下面
$p_{p3上}$=354.89
$p_{p3下}$= 83.51 $ℓ_0$ + 354.89
0.6 $P_{p3上}$=212.93
$P_{p3下}$=50.10 $ℓ_0$ + 212.93
(3) 切ばり位置からのモーメントのつり合い深さ

つり合い深さを算出するには、まず、切ばり位置での「主働側圧による作用モーメント」と、「受働側圧による抵抗モーメント」をそれぞれ求める。そして、それらが等しくなる条件の根入れ長が、つり合い深さとなる。(H11道仮p.87)

まず、側圧を求める。各層を2つに分割した各三角形の面積が側圧となるので、表計算すると下記のとおり。

計算式
底辺×高さ/2
側圧
$P$
(kN)
2-1層
15.79 × 3.80 /2
54.37 × 3.80 /2
30.00
103.30
2-2層
10.87 × 1.20 /2
13.31 × 1.20 /2
6.52
7.99
2-2層 17.26 × 1.20 /2 10.35
3層
212.93 × ℓ₀ /2
(50.10 ℓ₀ + 212.93) × ℓ₀ /2
106.47 ℓ₀
25.05 ℓ₀² + 106.47 ℓ₀

次に、アーム長を求める。

アーム長は、切ばり位置から各三角形の重心までの距離となる。

計算式
(切ばり位置から三角形
重心までの鉛直距離)
アーム長
$y$
(m)

3.80/3×1
3.80/3×2
1.27
2.53

3.80+1.20/3×1
3.80+1.20/3×2
4.20
4.60
3.80+1.20/3×2 4.60

3.80+1.20+ℓ₀/3×1
3.80+1.20+ℓ₀/3×2
0.33ℓ₀+5.00
0.67ℓ₀+5.00

主働土圧による作用モーメント$M_a$は、「側圧$P_a$」に「アーム長$y$」を乗じて算出する。

$$ M_a = P_a \cdot y $$

表計算すると下記のとおり。

主働側の側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
作用モーメント
$M_a$
(kN・m)
2-1層 30.00 1.27 38.01
103.30 2.53 261.70
2-2層 6.52 4.20 27.40
7.99 4.60 36.74
$\sum M_a=$ 363.84

以上より、主働土圧による作用モーメントは下式のとおりとなる。

$$ \sum M_a = 363.84 $$

今度は、受働土圧による抵抗モーメント$M_p$も同様に算出する。

受働側の側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
作用モーメント
$M_p$
(kN・m)
2-2層 10.35 4.60 47.63
3層 103.47ℓ₀ 0.33ℓ₀+5.00 35.49ℓ₀²+532.33ℓ₀
25.05ℓ₀²+103.47ℓ₀ 0.67ℓ₀+5.00 16.70ℓ₀³+196.24ℓ₀²+532.33ℓ₀
$\sum M_p=$ 16.70ℓ₀³+231.72ℓ₀²+1,064.67ℓ₀+47.63

以上より、受働土圧による抵抗モーメントは下式のとおりとなる。

$$ \begin{equation} \begin{split} \sum M_p = 16.70 {ℓ_0}^3 + 231.72 {ℓ_0}^2 + 1,064.67 ℓ_0 +47.63 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

つり合い深さは、「主働土圧による作用モーメント」と「受働土圧による抵抗モーメント」が等しい条件の根入れ長なので、下式のとおりとなる。

$$ \sum M_a = \sum M_p $$

変形すると、

$$ \sum M_p - \sum M_a =0 $$

よって、

$$ 16.70 {ℓ_0}^3 + 231.72 {ℓ_0}^2 + 1,064.67 ℓ_0 +47.63 -363.84 =0 $$
$$ 16.70 {ℓ_0}^3 + 231.72 {ℓ_0}^2 + 1,064.67 ℓ_0 -316.22 =0 $$

カルダノ(Cardano)の公式により、3次方程式の解を求めると、モーメントのつり合い深さは、下記のとおりとなる。

$$ ℓ_0=0.28(掘削底面より下方向に1.20+0.28=1.48\mathrm{m}の位置) $$
📌NOTE
  • カルダノ(Cardano)の公式については、Webを検索すると解説が簡単に見つかりますので、解説はそちらに譲ります。
(4) 根入れ長

根入れ長は、つり合い深さの1.2倍とする。(H11道仮p.87)

よって、根入れ長は、

$$ ℓ=(1.20+0.28) \times 1.2 = 1.78\ \mathrm{m} $$

なお、参考までに、親杭長の確認のため、地表面から根入れ下部までの距離を計算する。地表面からの距離は、「掘削深さ+ℓ」なので、

$$ L=4.80 + 1.78 = 6.58\ \mathrm{m} $$

2-1-2. 掘削完了時

(1) 主働土圧

掘削完了時の各層の主働土圧を表計算すると次のとおり。

なお、2層は最下段切ばりの位置で2-1層、2-2層に分割する。

層厚
$h$
(m)
土質 主働土圧係数
$K_a$

$\gamma$
(kN/m³)

$\sum \gamma \ h+q$
(kN/m²)

$c$
(kN/m²)

$2c \sqrt{K_a}$
(kN/m²)

$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}$
(kN/m²)
主働土圧
$p_a$
(kN/m²)
1層 1.00 砂質 0.376 18 10.00
28.00
0 0 3.76
10.53
$p_{a1上}=$ 3.76
$p_{a1下}=$10.53
2-1層 2.80 砂質 0.376 18 28.00
78.40
0 0 10.53
29.48
$p_{a2-1上}=$10.53
$p_{a2-1下}=$ 29.48
2-2層 2.20 砂質 0.376 18 78.40
118.00
0 0 29.48
44.37
$p_{a2-2上}=$ 29.48
$p_{a2-2下}=$ 44.37
3層 0.50 砂質 0.228 19 118.00
127.50
62 59.21 -32.31
-30.14
$p_{a3上}=$ 0.00
$p_{a3下}=$0.00
4層 $ℓ_0$ 砂質 0.228 19 127.50
19$ℓ_0$+127.50
62 59.21 -30.14
4.33$ℓ_0$-30.14
$p_{a4上}=$ 0.00
$p_{a4下}=$0.00
📌NOTE
  • 4層の主働土圧$p_{a4上}$、 $p_{a4下}$が「0」となっている理由は次のとおりです。
  • $p_{a4上}$は、$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}=-30.14$と負の数になったため、その土圧を無視するため、「0」としています。
  • $p_{a4下}$は、$K_a(\gamma h + q)-2c \sqrt{K_a}$の値が、4.33$ℓ_0$-30.14であり、層厚$ℓ_0$が6.9m以上でないと負の数となります。
  • 掘削深さ6.5mに対して、根入れがそれほど大きくならないことは経験上分かるので、$p_{a4下}=0$としています。

つづいて、土圧強度を計算します。

掘削底面より上は、主働土圧に作用幅である「親杭間隔」を乗じて、親杭一本が分担する土圧強度を計算します。(H11道仮p.151)

掘削底面より下(つまり、根入れ部)は、作用幅をフランジ幅とします。ただし、N値が10を超える場合は、フランジ幅の2倍とします。なお、この場合、最大値は杭間隔とします。(H11道仮p.88)

主働土圧
$p_a$
(kN/m²)
作用幅
$b$
(m)
土圧強度
$P_a$
(kN/m)
2-2層 上面
下面
$p_{a2-2上}=29.48$
$p_{a2-2下}=44.37$
0.3 $P_{a2-2上}=44.22$
$P_{a2-2下}=66.55$
3層 上面
下面
$p_{a3上}=0.00$
$p_{a3下}=0.00$
1.5 $P_{a3上}=0.00$
$P_{a3下}=0.00$
4層 上面
下面
$p_{a4上}=0.00$
$p_{a4下}=0.00$
0.6 $P_{a4上}=0.00$
$P_{a4下}=0.00$
(2) 受働土圧

根入れ部の受働土圧を表計算すると次のとおり。

層厚
$h'$
(m)
土質 受働土圧係数
$K_p$

$\gamma$
(kN/m³)

$\sum \gamma \ h'$
(kN/m²)

$c$
(kN/m²)

$2c \sqrt{K_p}$
(kN/m²)

$K_p \gamma h' +2c \sqrt{K_p}$
(kN/m²)
受働土圧
$p_p$
(kN/m²)
4層 $ℓ_0$ 砂質 4.40 19 0.00
19$ℓ_0$
62 259.96 259.96
83.51$ℓ_0$+259.96
$p_{p4上}=$259.96
$p_{p4下}=$83.51$ℓ_0$+259.96

つづいて、土圧強度を計算します。

受働土圧
$p_p$
(kN/m²)
作用幅
$b$
(m)
土圧強度
$P_p$
(kN/m)
4層 上面
下面
$p_{p4上}$=259.96
$p_{p4下}$= 83.51 $ℓ_0$ + 259.96
0.6 $P_{p4上}$=155.97
$P_{p4下}$=50.10 $ℓ_0$ + 155.97
(3) 切ばり位置からのモーメントのつり合い深さ

つり合い深さを算出するには、まず、切ばり位置での「主働側圧による作用モーメント」と、「受働側圧による抵抗モーメント」をそれぞれ求める。そして、それらが等しくなる条件の根入れ長が、つり合い深さとなる。(H11道仮p.87)

まず、側圧を求める。各層を2つに分割した各三角形の面積が側圧となるので、表計算すると下記のとおり。

計算式
底辺×高さ/2
側圧
$P$
(kN)
2-2層
44.22 × 2.20 /2
66.55 × 2.20 /2
48.64
73.21
4層
155.97 × ℓ₀ /2
(50.10 ℓ₀ + 155.97) × ℓ₀ /2
77.99 ℓ₀
25.05 ℓ₀² + 77.99 ℓ₀

次に、アーム長を求める。
アーム長は、切ばり位置から各三角形の重心までの距離となる。

計算式
(切ばり位置から三角形
重心までの鉛直距離)
アーム長
$y$
(m)

2.20/3×1
2.20/3×2
0.73
1.47

2.20+0.50+ℓ₀/3×1
2.20+0.50+ℓ₀/3×2
0.33ℓ₀+2.70
0.67ℓ₀+2.70

主働土圧による作用モーメント$M_a$は、「側圧$P_a$」に「アーム長$y$」を乗じて算出する。

$$ M_a = P_a \cdot y $$

表計算すると下記のとおり。

主働側の側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
作用モーメント
$M_a$
(kN・m)
2-2層 48.64 0.73 35.67
73.21 1.47 107.37
$\sum M_a=$ 143.04

以上より、主働土圧による作用モーメントは下式のとおりとなる。

$$ \sum M_a = 143.04 $$

今度は、受働土圧による抵抗モーメント$M_p$も同様に算出する。

受働側の側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
作用モーメント
$M_p$
(kN・m)
4層 77.99ℓ₀ 0.33ℓ₀+2.70 26.00ℓ₀²+210.56ℓ₀
25.05ℓ₀²+77.99ℓ₀ 0.67ℓ₀+2.70 16.70ℓ₀³+119.63ℓ₀²+210.56ℓ₀
$\sum M_p=$ 16.70ℓ₀³+145.63ℓ₀²+421.13ℓ₀

以上より、受働土圧による抵抗モーメントは下式のとおりとなる。

$$ \begin{equation} \begin{split} \sum M_p = 16.70 {ℓ_0}^3 + 145.63 {ℓ_0}^2 + 421.13 ℓ_0 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

つり合い深さは、「主働土圧による作用モーメント」と「受働土圧による抵抗モーメント」が等しい条件の根入れ長なので、下式のとおりとなる。

$$ \sum M_a = \sum M_p $$

変形すると、

$$ \sum M_p - \sum M_a =0 $$

よって、

$$ 16.70 {ℓ_0}^3 + 145.63 {ℓ_0}^2 + 421.13 ℓ_0 -143.04 =0 $$

カルダノ(Cardano)の公式により、3次方程式の解を求めると、モーメントのつり合い深さは、下記のとおりとなる。

$$ ℓ_0=0.31(掘削底面より下方向に0.31\mathrm{m}の位置) $$
📌NOTE
  • カルダノ(Cardano)の公式については、Webを検索すると解説が簡単に見つかりますので、解説はそちらに譲ります。
(4) 根入れ長

根入れ長は、つり合い深さの1.2倍とする。(H11道仮p.87)

よって、根入れ長は、

$$ ℓ=0.31 \times 1.2 = 0.37\ \mathrm{m} $$

なお、参考までに、親杭長の確認のため、地表面から根入れ下部までの距離を計算する。地表面からの距離は、「掘削深さ+ℓ」なので、

$$ L=6.50 + 0.37 = 6.87\ \mathrm{m} $$

2-1-3. 結果の比較

上記より、「最下段切ばり設置直前」と「掘削完了時」、それぞれの根入れ長および地表面からの距離によって、「根入れ部の土圧および水圧に対する安定から必要となる根入れ長」を決定する。

根入れ長さ 【参考】地表面からの距離
最下段切ばり設置直前 1.78 6.58
掘削完了時 0.37 6.87

以上より、土圧および水圧に対する安定から必要となる根入れ長は、

$$ ℓ=0.37\ \mathrm{m} $$

2-2. 土留め壁の許容鉛直支持力から定まる根入れ長

路面覆工などからの鉛直荷重が作用しないので、検討を省略する。(H11道仮p29)

2-3. 掘削底面の安定から定まる根入れ長

掘削底面の安定に必要な根入れ長は、地盤によって異なります。

砂質地盤ですが、親杭横矢板の場合は、遮水性がない構造であるため、ボイリングおよびパイピングの検討を行いません。

厚い粘土質地盤は「ヒービングの検討」をすることになります。(H11道仮p.76~82)

なお、今回の設計条件では、すべて砂質地盤ですが、掘削底面部分のN値が高いことから、ヒービングを検討することとします。

2-3-1. ヒービングの検討

次の式を満足できない場合は、ヒービングの検討を行う。(H11道仮p.89、29)

$$ N_b < 3.14 $$

ここに、

  • $N_b$:安定数
    • $\displaystyle N_b = \frac{\gamma \ H}{c} $
    • $\gamma$:土の湿潤単位体積重量(kN/m³)
    • $H$:掘削深さ(m)
    • $c$:掘削底面付近の地盤の粘着力(kN/m²)$c=62$

ここでの右辺は、掘削背面に係る鉛直荷重を示している。

層厚
$h$
(m)
単位体積重量
$\gamma$
(kN/m³)

$(\gamma' + \gamma_w) \cdot h$
(kN/m²)
1層 1.00 18.0 18.0
2層 5.00 18.0 90.0
3層 0.50 19.0 9.5
$\sum$ 6.50 117.5

よって、

$$ \begin{equation} \begin{split} N_b &=\frac{\gamma \ H}{c}\\[5px] &=\frac{117.5}{62}\\[5px] &=1.90\ < 3.14 \ \mathrm{OK} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

よって、ヒービングの検討を省略する。

2-4. 最小根入れ長

親杭なので、最小の根入れ長は「1.5m」とします。(H11道仮p.87)

$$ ℓ_{min}=1.5\ \mathrm{m} \nonumber $$

2-5. 根入れ長の決定

根入れ長は、それぞれの計算により求められる根入れ長のうち最も長いものとする。(H11道仮p.87)

計算方法 計算結果
土圧および水圧に対する安定から必要となる根入れ長 $ℓ=0.37$
掘削底面の安定から決定される根入れ長 省略
最小根入れ長 $ℓ_{min}=1.50$

よって、根入れ長$D=1.50\ \mathrm{m}$

2-6. 親杭の長さ

親杭の長さは、「掘削深さ」に「根入れ長」を加え、0.5m単位で切り上げる。

$$ \begin{equation} \begin{split} L &= H+D\\[5px] &= 6.50+1.50\\[5px] &= 8.00\\[5px] &\fallingdotseq 8.0\ \mathrm{m} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

ただし、リース材の標準保有長さ(H11道仮p.321)の範囲外、最小長さ未満の場合は、型式を見直すこと。(保有長さは地域により異なる。)

H-300については、

  • 標準保有長さ 8.0~16.0m
  • 最小長さ 5.0m

であるため、L=8.0mはOK

3. 壁体の断面力算定

土留め壁の断面計算に用いる最大曲げモーメントは、「掘削完了時における最下段切ばり」、「最下段切ばり設置直前における一段上の切ばり」と、それぞれの場合の「仮想支持点」間をスパンとする単純ばりとし、この両方の場合について断面決定用土圧を作用させて計算する。(H11道仮p90)

断面決定用の土圧と水圧は、根入れ長の計算で用いた値を用いる。(H11道仮p91, 35)

3-1. 最下段切ばり設置直前

3-1-1. 仮想支持点の計算

仮想支持点は、土留め壁の根入れ長決定のための安定計算で「つり合い深さ」を求めた際の受働抵抗の合力の作用点とする。(H11道仮p91)

切ばりから、下方向にある仮想支持点までの距離は、下式により算出する。

$$ y_p= \frac{\sum M_p}{\sum P_p}\nonumber $$

ここに、「2-1-1. (3)切ばり一からのモーメントのつり合い深さ」より

$$ \begin{equation} \begin{split} \sum M_p = 16.70 {ℓ_0}^3 + 231.72 {ℓ_0}^2 + 1,064.67 ℓ_0 +47.63 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

また、「2-1-1. (3)切ばり一からのモーメントのつり合い深さ」より受働土圧側の側圧は、下表のとおり。

計算式
底辺×高さ/2
側圧
$P$
(kN)
2-2層 17.26 × 1.20 /2 10.35
3層
212.93 × ℓ₀ /2
(50.10 ℓ₀ + 212.93) × ℓ₀ /2
106.47 ℓ₀
25.05 ℓ₀² + 106.47 ℓ₀
$\sum P$ 25.05 ℓ₀² + 212.93 ℓ₀ + 10.35

よって、

$$ \sum P_p = 25.05 {ℓ_0}^2 + 212.93 ℓ_0 + 10.35 $$
$$ ℓ_0 =0.28 $$

であるため、

$$ \begin{equation} \begin{split} y_p &=\frac{16.70 \times 0.28^3 + 231.72 \times 0.28^2 + 1,064.67 \times 0.28 + 47.63}{25.05 \times 0.28^2 + 212.93 \times 0.28 + 10.35} \\[5px] &=\frac{363.8}{71.9} \\[5px] &=5.06\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
なお、切ばりから掘削底面までの距離は、3.80mであるため、掘削底面から仮想支持点までの距離は、 $$ 5.06 - 3.80 = 1.26\ \mathrm{m} $$ となる。

3-1-2. 最大曲げモーメントの計算

(1) 切ばり位置における反力

切ばり位置をA点、仮想支持点をB点とする単純ばりを仮定し、A点における反力を計算する。(H11道仮p.91)

a. 土圧

まず、単純ばりに作用させる断面決定用土圧は、H11道仮p36~38に従って算出する。

土の平均単位体積重量は、地表面から仮想支持点までの間における各層の平均なので
$$ \begin{equation} \begin{split} \bar{\gamma} &=\frac{\sum h \cdot \gamma}{\sum h} \\[5px] &=\frac{109.20}{6.06} \\[5px] &=18.01 \ \mathrm{kN/m^3} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
層厚
$h$
(m)

$\gamma$
(kN/m³)

$h \cdot \gamma$
(kN/m²)
1層 1.00 18 18.00
2-1層 3.80 18 68.40
2-2層 1.20 18 21.60
3層 0.06 19 1.20
$\sum$ 6.06 109.20
掘削深さHによる係数は、掘削深さ:4.8mであるため、
$$ \begin{equation} \begin{split} a &=\frac{1}{4}(H-1) \\[5px] &=\frac{1}{4}(4.8-1) \\[5px] &=1.0 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

地質による係数は、土質:砂質であるため、

$$ b=2 $$

よって、親杭一本当たりの主働土圧は、

$$ \begin{equation} \begin{split} p &=a \cdot b \cdot \gamma \cdot (親杭間隔)\\[5px] &=1 \cdot 2 \cdot 18.01 \cdot 1.5 \\[5px] &=51.33 \ \mathrm{kN/m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

なお、地表面での上載荷重は、平均単位体積重量を用いて「厚さ」に換算する。

$$ \begin{equation} \begin{split} 換算土圧 &=\frac{q}{\gamma} \\[5px] &=\frac{10.0}{18.01} \\[5px] &=0.56 \ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
b. A点における反力の計算

断面力の算定は、切ばりと仮想支持点を支点とする単純ばりとして計算する。

また、pが負となる作用力は無視する。

まず、「側圧$P$」を求める。
計算式 側圧
$P$
(kN)
2-1層 51.33×3.80= 195.05
B点(仮想支持点)から重心までの距離「アーム長$y$」を求める。
計算式 B点からのアーム長
$y$
(m)
2-1層 1.26+3.80/2= 3.16
側圧$P$にアーム長$y$を乗じて、B点での作用力によるモーメント$M_B$を算出する。
側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
モーメント
$M_B$
(kN・m)
2-1層 195.05 3.16 617.01

よって、A点(切ばり位置)における反力$R_A$は、B点でのモーメントのつり合いより、

$$ (A点からB点までの距離)\times R_A = \sum M_B $$ $$5.06\times R_A=617.01$$ よって、切ばり位置における反力は $$R_A=121.86\ \mathrm{kN}$$
(2) 土圧による曲げモーメント

最大曲げモーメントは、AB間の中央付近である「2-1層」で発生すると想定されるので、2-1層の境界から下方向に距離 「$x$」 を定義し、その「$x$」から上部方向における曲げモーメントを計算する。

A点(切ばり位置)から$x$の位置までを図のとおり。 側圧 $P$ は、長方形の面積なので、 $$ P=51.33 x \ \mathrm{kN} $$ アーム長 $y$ は、A点から長方形の重心までの距離なので、 $$ y= 0.50x\ \mathrm{m} $$ モーメント $M$ は、側圧 $P$ とアーム長 $y$ の積なので、
$$ \begin{equation} \begin{split} M &=P \times y \\[5px] &=51.33 x \times 0.50x \\[5px] &=25.66x^2 \ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
(3) 最大曲げモーメント

(1),(2)より、任意点$x$での曲げモーメントは、下式のとおりとなる。

$$ \begin{equation} \begin{split} M_x &=R_A \cdot x - 25.66 \cdot x^2 \\[5px] &=121.86 \cdot x - 25.66 \cdot x^2 \\[5px] \end{split} \nonumber \end{equation} $$

微分すると、

$$ M_x ^\prime =121.86 - 51.33 \cdot x \nonumber $$

最大曲げモーメントの位置は、上式=0となるため、

$$ \begin{equation} \begin{split} x &=\frac{121.86}{51.33}\\[5px] &=2.37\ \mathrm{m} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

よって、最大曲げモーメントの値は、

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max} &= 121.86 \times 2.37 - 25.66 \times 2.37^2\\[5px] &=144.65\ \mathrm{kN・m} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

3-1-3. 曲げ応力度の照査

親杭に発生する最大曲げ応力度が、許容応力度以下であれば「OK」と判定し、「3-2. 掘削完了時」に進む。
許容応力度をを超えた場合は「NG」と判定し、「1-2. 親杭の設定」に戻り、型式を上げる。(H11道仮p.109)

$$ \sigma_{max}=\frac{M_{max}}{Z \cdot e} \nonumber $$

ここに、

  • $\sigma_{max}$:鋼矢板に発生する最大曲げ応力度(N/mm²)
  • $Z$:断面係数(m³/m)$Z=1,350.0\ \mathrm{cm^3/m}=0.0013500\ \mathrm{m^3/m}$
  • $e$:断面係数の有効率(応力度の計算)$e=100\%$

よって、

$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{max} &=\frac{144.65}{0.0013500 \cdot 1.0}\\[5px] &=107,149\ \mathrm{kN/m^2}\\[5px] &=107.1\ \mathrm{N/mm^2} \leqq \sigma_{sa}=210.0\ \mathrm{N/mm^2} \ \mathrm{OK} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

3-2. 掘削完了時

3-2-1. 仮想支持点の計算

仮想支持点は、土留め壁の根入れ長決定のための安定計算で「つり合い深さ」を求めた際の受働抵抗の合力の作用点とする。(H11道仮p91)

最下段切ばりから、下方向にある仮想支持点までの距離は、下式により算出する。

$$ y_p= \frac{\sum M_p}{\sum P_p}\nonumber $$

ここに、「2-1-2. (3)切ばり一からのモーメントのつり合い深さ」より

$$ \begin{equation} \begin{split} \sum M_p = 16.70 {ℓ_0}^3 + 145.63 {ℓ_0}^2 + 421.13 ℓ_0 \end{split}\nonumber \end{equation} $$

また、「2-1-2. (3)切ばり一からのモーメントのつり合い深さ」より受働土圧側の側圧は、下表のとおり。

計算式
底辺×高さ/2
側圧
$P$
(kN)
4層
155.97 × ℓ₀ /2
(50.10 ℓ₀ + 155.97) × ℓ₀ /2
77.99 ℓ₀
25.05 ℓ₀² + 77.99 ℓ₀
$\sum P$ 25.05 ℓ₀² + 155.97 ℓ₀

よって、

$$ \sum P_p = 25.05 {ℓ_0}^2 + 155.97 ℓ_0 $$
$$ ℓ_0 =0.31 $$

であるため、

$$ \begin{equation} \begin{split} y_p &=\frac{16.70 \times 0.31^3 + 145.63 \times 0.31^2 + 421.13 \times 0.31}{25.05 \times 0.31^2 + 155.97 \times 0.31} \\[5px] &=\frac{143.0}{50.1} \\[5px] &=2.86\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
なお、切ばりから掘削底面までの距離は、6.50-3.80=2.70mであるため、掘削底面から仮想支持点までの距離は、
$$ 2.86 - 2.70 = 0.16\ \mathrm{m} $$
となる。
仮想支持点の最小値は、「掘削底面以深75cm(H11道仮p91)」であるが、0.16 < 0.75なので、掘削底面から仮想支持点までの距離は、
$$ 0.75 \ \mathrm{m} $$
となる。

3-2-2. 最大曲げモーメントの計算

(1) 切ばり位置における反力

切ばり位置をA点、仮想支持点をB点とする単純ばりを仮定し、A点における反力を計算する。(H11道仮p.91)

a. 土圧

まず、単純ばりに作用させる断面決定用土圧は、H11道仮p36~38に従って算出する。

土の平均単位体積重量は、地表面から仮想支持点までの間における各層の平均なので
$$ \begin{equation} \begin{split} \bar{\gamma} &=\frac{\sum h \cdot \gamma}{\sum h} \\[5px] &=\frac{131.75}{7.25} \\[5px] &=18.17 \ \mathrm{kN/m^3} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
層厚
$h$
(m)

$\gamma$
(kN/m³)

$h \cdot \gamma$
(kN/m²)
1層 1.00 18 18.00
2-1層 2.80 18 50.40
2-2層 2.20 18 39.60
3層 0.50 19 9.50
4層 0.75 19 14.25
$\sum$ 7.25 131.75
掘削深さHによる係数は、掘削深さ:6.5mであるため、a=1
地質による係数は、土質:砂質であるため、b=2
よって、主働土圧は、
$$ \begin{equation} \begin{split} p &=a \cdot b \cdot \gamma \cdot (親杭間隔)\\[5px] &=1 \cdot 2 \cdot 18.17 \cdot 1.5 \\[5px] &=54.52 \ \mathrm{kN/m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

なお、地表面での上載荷重は、平均単位体積重量を用いて「厚さ」に換算する。

$$ \begin{equation} \begin{split} 換算土圧 &=\frac{q}{\gamma} \\[5px] &=\frac{10.0}{18.17} \\[5px] &=0.55 \ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
b. A点における反力の計算

断面力の算定は、切ばりと仮想支持点を支点とする単純ばりとして計算する。

また、pが負となる作用力は無視する。

まず、「側圧$P$」を求める。
計算式 側圧
$P$
(kN)
2-2層 54.52×2.20= 119.94
3層 54.52×0.50= 27.26
B点(仮想支持点)から重心までの距離「アーム長$y$」を求める。
計算式 B点からのアーム長
$y$
(m)
2-2層 0.75+0.50+2.20/2= 2.35
3層 0.75+0.50/2= 1.00
側圧$P$にアーム長$y$を乗じて、B点での作用力によるモーメント$M_B$を算出する。
側圧
$P$
(kN)
アーム長
$y$
(m)
モーメント
$M_B$
(kN・m)
2-2層 119.94 2.35 281.85
3層 27.26 1.00 27.26
$\sum$ 147.2 309.11

よって、A点(切ばり位置)における反力$R_A$は、B点でのモーメントのつり合いより、

$$ (A点からB点までの距離)\times R_A = \sum M_B $$ $$(0.75+0.50+2.20)\times R_A=309.11$$ よって、切ばり位置における反力は $$R_A=89.6\ \mathrm{kN}$$
(2) 土圧による曲げモーメント

最大曲げモーメントは、AB間の中央付近である「2-2層」で発生すると想定されるので、2-2層の境界から下方向に距離 「$x$」 を定義し、その「$x$」から上部方向における曲げモーメントを計算する。

A点(切ばり位置)から$x$の位置までを図のとおり。 側圧$P$は、長方形の面積なので、 $$ P=54.52 x \ \mathrm{kN} $$ アーム長$y$は、A点から長方形の重心までの距離なので、 $$ y= 0.50x\ \mathrm{m} $$ モーメント $M$ は、側圧 $P$ とアーム長 $y$ の積なので、
$$ \begin{equation} \begin{split} M &=P \times y \\[5px] &=54.52 x \times 0.50x \\[5px] &=27.26x^2 \ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
(3) 最大曲げモーメント

(1),(2)より、任意点xでの曲げモーメントは、下式のとおりとなる。

$$ \begin{equation} \begin{split} M_x &=R_A \cdot x - 27.26 \cdot x^2 \\[5px] &=89.6 \cdot x - 27.26 \cdot x^2 \\[5px] \end{split} \nonumber \end{equation} $$

微分すると、

$$ M_x ^\prime =89.60 - 54.52 \cdot x \nonumber $$

最大曲げモーメントの位置は、上式=0となるため、

$$ \begin{equation} \begin{split} x &=\frac{89.60}{54.52}\\[5px] &=1.64\ \mathrm{m} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

よって、最大曲げモーメントの値は、

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max} &= 89.60 \times 1.64 - 27.26 \times 1.64^2\\[5px] &=73.63\ \mathrm{kN・m} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

3-2-3. 曲げ応力度の照査

親杭に発生する最大曲げ応力度が、許容応力度以下であれば「OK」と判定し、「4. 横矢板の計算」に進む。
許容応力度をを超えた場合は「NG」と判定し、「1-2. 親杭の設定」に戻り、型式を上げる。(H11道仮p.109)

$$ \sigma_{max}=\frac{M_{max}}{Z \cdot e} \nonumber $$

ここに、

  • $\sigma_{max}$:鋼矢板に発生する最大曲げ応力度(N/mm²)
  • $Z$:断面係数(m³/m)$Z=1,350.0\ \mathrm{cm^3/m}=0.0013500\ \mathrm{m^3/m}$
  • $e$:断面係数の有効率(応力度の計算)$e=100\%$

よって、

$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{max} &=\frac{73.63}{0.0013500 \cdot 1.0}\\[5px] &=54,538\ \mathrm{kN/m^2}\\[5px] &=54.5\ \mathrm{N/mm^2} \leqq \sigma_{sa}=210.0\ \mathrm{N/mm^2} \ \mathrm{OK} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

4. 横矢板の設計

横矢板は等分布荷重が作用する単純ばりとして計算を行う。(H11道仮p.110)

4-1. 土圧強度とスパン

土圧強度$w$は「3-2. 掘削完了時」の主働土圧より算出する。

$$ \begin{equation} \begin{split} w &=\frac{主働土圧}{親杭間隔}=\frac{54.52}{1.5}\\[5px] &=36.34\ \mathrm{kN/m^2} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

単純ばりのスパン$ℓ_2$は、親杭間隔$a$から、両端それぞれの親杭の幅の半分$B/2$を差し引く長さとする。

$$ \begin{equation} \begin{split} ℓ_2 &= a - B / 2 \times 2 \\[5px] &= 1.50 - 0.30 / 2 \times 2 \\[5px] &= 1.20\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

土留め板の深さ方向の単位幅$b_w$は下記のとおりとする。

$b_w=1,000\ \mathrm{mm}\ = 1\ \mathrm{m}$

4-2. 必要板厚の計算

土留め板に作用する最大の作用モーメント$M_w$を求めてから、必要板厚$t$を算出する。(H11道仮p.111)

等分布荷重が作用する単純ばりであるため、公式より作用モーメント$M_w$は次のとおり。

$$ \begin{equation} \begin{split} M_w &= \frac{1}{8} \cdot w \cdot ℓ_2^2 \\[5px] &= \frac{1}{8} \cdot 36.34 \cdot 1.20^2 \\[5px] &= 6.54\ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

必要板厚$t$は、次式で求める。ただし、最小板厚は、30mmとする。

$$ \begin{equation} \begin{split} t &=\sqrt{\frac{6 \cdot M_w}{b_w \cdot \sigma_{wa}}} \\[5px] &=\sqrt{\frac{6 \cdot 6.54}{1 \cdot 13,500}} \\[5px] &= 0.0539\ \mathrm{m} \\[5px] &= 54\ \mathrm{mm} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

4-3. せん断応力度の照査

土留め板に作用する作用せん断力$Q_w$は、単純ばりに作用する分布荷重の公式により算出する。(H11道仮p.111)

$$ \begin{equation} \begin{split} Q_w &= \frac{1}{2} \cdot w \cdot ℓ_2 \\[5px] &= \frac{1}{2} \cdot 36.34 \cdot 1.20 \\[5px] &= 21.81\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

「1-3. 横矢板の設定」で決めた許容せん断応力$\tau_{wa}$以下であれば「OK」と判定し、終了します。

許容せん断応力度を超えた場合は「NG」と判定し、「1-3. 横矢板の設定」に戻って使用材を変えます。

$$ \begin{equation} \begin{split} \tau &= \frac{Q_w}{b \cdot t}\\[5px] &= \frac{21.81}{1 \cdot 0.0539}\\[5px] &= 404.4\,\mathrm{kN/m^2} \ \leqq \ \tau_{wa} = 1,050\,\mathrm{kN/m^2}\ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

5. 腹起しの設計

H11道仮p.116に従い、腹起しを設計する。

5-1. 荷重の計算

支保工の設計に用いる荷重は、断面決定用土圧と水圧とし、最終掘削状態において各段の支保工に下方分担法により作用させる。(H11道仮p.35)

土圧強度$w$は「3-2. 掘削完了時」の主働土圧を用いて、次のとおり算出する。 $$ \begin{equation} \begin{split} w &= \frac{主働土圧}{親杭間隔}= \frac{54.52}{1.5}\\[5px] &= 36.34\,\mathrm{kN/m^2} \end{split} \nonumber \end{equation} $$ 上段の腹起し材に作用する土圧は、0層から2-1層までであり、下表のとおりなので、上段の支保工反力は、 $$R_1=158.11 \,\mathrm{kN}$$ となる。
計算式
層厚 × $w$
側圧
$P$
(kN)
0層 $0.55 \times 36.34 =$ $20.00$
1層 $1.00 \times 36.34 =$ $36.34$
2-1層 $2.80 \times 36.34 =$ $101.77$
$\sum$ $158.11$
下段の腹起し材に作用する土圧は、2-2層から3層までであり、下表のとおりなので、下段の支保工反力は、 $$R_2=98.13\,\mathrm{kN}$$ となる。
計算式
層厚 × $w$
側圧
$P$
(kN)
2-2層 $2.20 \times 36.34 =$ $79.96$
3層 $0.50 \times 36.34 =$ $18.17$
$\sum$ $98.13$

5-2. 断面力の計算

(1) 諸条件の計算

腹起しを設計する際の荷重の載荷方法は、単位長さ当りの支保工反力を等分布荷重として載荷する。そして、切ばりの水平間隔Bから火打ちを差し引いた長さを支間(スパン)とする単純ばりとして断面力を計算する。(H11道仮p118,119)

切ばりの水平間隔 $B=4.50 \ \mathrm{m}$
火打ちの腹起し方向の幅 $ℓ_2=1.50 \ \mathrm{m}$
火打ち間の幅 $ℓ_1 = B - 2 \cdot ℓ_2$ $= 4.50 - 2 \times 1.50$ $= 1.50\ \mathrm{m}$
火打ちの角度 $\theta =45 \ \mathrm{度}$
よって、H11道仮p118より、支間は
$$ \begin{equation} \begin{split} ℓ &= ℓ_1 + ℓ_2 \\[5px] &= 1.50 + 1.50 \\[5px] &= 3.00\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

軸力が作用する腹起し材であるため、曲げと圧縮を受ける部材として設計する。

火打ちの腹起し方向の幅(妻部)$ℓ_4=1.50 \ \mathrm{m}$

火打ち間の幅(妻部)
$$ \begin{equation} \begin{split} ℓ_3 &= B - 2 \cdot ℓ_4 \\[5px] &= 4.50 - 2 \times 1.50 \\[5px] &= 1.50\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
よって、軸力を考慮する腹起しの軸力分担幅は、
$$ \begin{equation} \begin{split} b &= \frac{1}{2} \cdot ℓ_3 + ℓ_4 \\[5px] &= \frac{1}{2} \times 1.50 + 1.50 \\[5px] &= 2.25\ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

温度変化に伴う軸力増加は$\Delta N = 150 \ \mathrm{kN}$とする。

(2) 上段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_1 &= (R_1 \cdot b + \Delta N) / 本数 \\[5px] &= (158.11 \times 2.25 + 150) /1 \\[5px] &= 505.75\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大曲げモーメント>

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max1} &= \frac{R_1 \cdot ℓ^2}{8} \times \frac{1}{本数} \\[5px] &= \frac{158.11 \times 3.00^2}{8} \times \frac{1}{1} \\[5px] &= 177.87\ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大せん断力>

$$ \begin{equation} \begin{split} S_{max1} &= \frac{R_1 \cdot ℓ}{2} \times \frac{1}{本数} \\[5px] &= \frac{158.11 \times 3.00}{2} \times \frac{1}{1} \\[5px] &= 237.17\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

(3) 下段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_2 &= (R_2 \cdot b + \Delta N) / 本数 \\[5px] &= (98.13 \times 2.25 + 150) /1 \\[5px] &= 370.79\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大曲げモーメント>

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max2} &= \frac{R_2 \cdot ℓ^2}{8} \times \frac{1}{本数} \\[5px] &= \frac{98.13 \times 3.00^2}{8} \times \frac{1}{1} \\[5px] &= 110.40\ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大せん断力>

$$ \begin{equation} \begin{split} S_{max2} &= \frac{R_2 \cdot ℓ}{2} \times \frac{1}{本数} \\[5px] &= \frac{98.13 \times 3.00}{2} \times \frac{1}{1} \\[5px] &= 147.20\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

5-3. 応力度の照査(上段)

(1) 安定の照査

照査は、2つの照査式で行う。(H11道仮p50)

照査式(2-6-1)

$$ \begin{equation} \begin{split} \frac{\sigma_c}{\sigma_{caz}}+\frac{\sigma_{bcy}}{\sigma_{bagy}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{\sigma_{bao}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \leqq 1 \end{split} \nonumber \end{equation} $$

照査式(2-6-2)

$$ \sigma_c+\frac{\sigma_{bcy}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \leqq \sigma_{caℓ} \nonumber $$

ここに、

  • $\sigma_c$:照査する断面に作用する軸方向力による圧縮応力度(N/mm²)
    • $\displaystyle \sigma_c=\frac{N}{A}=\frac{505.7 \times 1,000}{154.90 \times 100}=32.6\ \mathrm{N/mm^2}$
  • $\sigma_{bcy}$:強軸まわりに作用する曲げモーメントによる曲げ圧縮応力度(N/mm²)
    • $\displaystyle \sigma_{bcy}=\frac{M_{max}}{Z}=\frac{177.9 \times 1,000,000}{2,000 \times 1,000}=88.9\ \mathrm{N/mm^2}$
  • $\sigma_{bcz}$:弱軸まわりに作用する曲げモーメントによる曲げ圧縮応力度(N/mm²)
    • $\displaystyle \sigma_{bcz}=0$
  • $\sigma_{caz}$:弱軸まわりの許容軸方向圧縮応力度(N/mm²)
    • ただし、$b ^\prime \leqq 13.1\ t ^\prime$ とする
    • $b ^\prime$:フランジ片幅
      • $b ^\prime = ( 350-12)/2=169 \ \mathrm{mm}$
    • $t ^\prime$:フランジ厚
      • $t ^\prime = 19 \ \mathrm{mm}$
    • $ℓ_z$:弱軸まわりの座屈長(水平方向座屈長)
      • $ℓ_z=3.00 \ \mathrm{m}$(H11道仮p122より)
    • よって、弱軸の細長比は、
      • $\displaystyle \frac{ℓ_z}{r_z}=\frac{3.00 \times 1,000}{8.99 \times 10}=33.4$
    • よって、軸方向圧縮の計算式は、18<ℓ/r≦92 より(H11道仮p.47)
$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{caz}&=[140-0.82(ℓ/r_z-18)]\times 1.5\\[5px] &=[140-0.82(33.4-18)]\times1.5\\[5px] &=191.1\ \mathrm{N/mm^2} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
  • $\sigma_{bagy}$:局部座屈を考慮しない強軸まわりの許容曲げ圧縮応力度(N/mm²)
    • ただし、$2A_c \geqq A_w$
    • $A_c$:圧縮フランジの総断面積
      • $A_c=350 \times 19 = 6,650\ \mathrm{mm^2}$
    • $A_w$:ウェブの総断面積
      • $A_w=(350 - 2 \times 19) \times 12 = 3,744\ \mathrm{mm^2}$
    • $ℓ_y$:フランジ間の固定間距離(鉛直方向座屈長)
      • $ℓ_y=3.00\ \mathrm{m}$(H11道仮p.122)
    • よって、$ℓ/b$は、
      • $\displaystyle \frac{ℓ_y}{b}=\frac{3.00 \times 1,000}{350}=8.6$
    • よって、曲げ圧縮縁の計算式は、4.5 <$ℓ/b$≦30より(H11道仮p47)
$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{bagy}&=\{140 - 2.4 ( ℓ_y / b - 4.5)\} \times 1.5\\[5px] &=\{140 - 2.4 ( 8.6 - 4.5)\} \times 1.5\\[5px] &=195.3 \ \mathrm{N/mm^2} \end{split} \nonumber \end{equation} $$
  • $\sigma_{ba0}$:局部座屈を考慮しない許容曲げ圧縮応力度の上限値
    • $\sigma_{ba0}=210 \ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p51)
  • $\sigma_{caℓ}$:圧縮応力を受ける自由突出板の局部座屈に対する許容応力度

    • $\sigma_{caℓ}=210 \ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p51)
    • ただし、$b ^\prime \leqq 13.1\ t ^\prime$とする。
  • $\sigma_{eay}$, $\sigma_{eaz}$:それぞれ強軸および弱軸まわりのオイラー座屈応力度(N/mm²) (H11道仮p51)

    • $\displaystyle \sigma_{eay}=\frac{1,200,000}{(ℓ ^\prime / r_y)^2}=\frac{1,200,000}{(3,000/151.0)^2}=\frac{1,200,000}{394.7}=3,040.1\ \mathrm{N/mm^2}$
    • $\displaystyle \sigma_{eaz}=\frac{1,200,000}{(ℓ ^\prime / r_z)^2}=\frac{1,200,000}{(3,000/89.9)^2}=\frac{1,200,000}{1,113.6}=1,077.6\ \mathrm{N/mm^2}$
      • $ℓ ^\prime$:材料両端の支点条件より定まる有効座屈長(mm)
      • $ℓ ^\prime=3.00 \times 1,000 = 3,000\ \mathrm{mm}$
      • $r_y, r_z$:それぞれ強軸および弱軸まわりの断面二次半径(mm)
      • $r_y=15.10 \times 10 = 151.0\ \mathrm{mm}$
      • $r_z=8.99 \times 10 = 89.9\ \mathrm{mm}$

よって、
照査式(2-6-1)

$$ \begin{equation} \begin{split} \frac{\sigma_c}{\sigma_{caz}}&+\frac{\sigma_{bcy}}{\sigma_{bagy}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{\sigma_{bao}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})}\\[5px] &= \frac{32.6}{191.1}+\frac{88.9}{195.3(1-\frac{32.6}{3,040.1})}+\frac{0.0}{210.0(1-\frac{32.6}{1,077.6})} \\[5px] &=0.17+0.46+0.00\\[5px] &=0.63\leqq 1 \ \ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

照査式(2-6-2)

$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_c&+\frac{\sigma_{bcy}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \\[5px] &=32.6+\frac{88.9}{(1-\frac{32.6}{3,040.1})}+\frac{0.0}{(1-\frac{32.6}{1,077.6})} \\[5px] &=32.6+89.9+0.0 \\[5px] &=122.6 \leqq \sigma_{caℓ}=210.0 \ \ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

(2) せん断力の照査

最大せん断力をウェブの面積で除して求める。

$$ \begin{equation} \begin{split} \tau &= \frac{S_{max1}}{A_w} \\[5px] &= \frac{237.17 \times 1,000}{(350 - 2 \times 19)\times 12} \\[5px] &= 63.3 \leqq \tau_a=120.0 \ \ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

5-4. 応力度の照査(下段)

鋼材が上段と下段で同じであること、および、軸力、最大曲げモーメント、最大せん段力がいずれも、上段の方が大きいことから、下段の照査を省略する。

6. 切ばりの設計

6-1. 荷重の計算

荷重は、腹起しの設計で算出した「単位長さあたりの支保工反力」なので、

  • 上段 $w_{x1}=158.11 \ \mathrm{kN/m}$
  • 下段 $w_{x2}=98.13 \ \mathrm{kN/m}$

曲げモーメントは、鉛直方向座屈長(切ばり全長)をスパンとする単純ばりで計算する。

曲げ荷重$w$は、切ばりの自重を含めて、下記のとおりとする。(H11道仮p122)

  • $w=5.00 \ \mathrm{kN/m}$

軸力は、「土圧」、「水圧」、および「温度変化に伴う軸力」を考慮する。

温度変化に伴う軸力増加は$\Delta N = 150 \ \mathrm{kN}$とする。

6-2. 断面力の計算

切ばりは、「軸力」と「モーメント」が作用する部材として設計する。

  • 軸力を考慮する荷重負担幅(水平間隔) $ℓ_1 = ℓ_2 = 4.50 \ \mathrm{m}$
  • 鉛直方向の座屈長(切ばり全長) $L_1 = 8.60 \ \mathrm{m}$
  • 水平方向の座屈長(火打ち間距離)
    $$ \begin{equation} \begin{split} L_2 = 1.50 \times ℓ= 1.5 \times (8.60/2 -1.50)=4.20 \ \mathrm{m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

(1) 上段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_1 &= w_{x1} \cdot \frac{ℓ_1 + ℓ_2}{2} + \Delta N \\[5px] &= 158.11 \times \frac{4.50 + 4.50}{2} + 150 \\[5px] &= 861.5\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大曲げモーメント>

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max1} &= \frac{w \cdot L_1^2}{8} \\[5px] &= \frac{5.00 \times 8.60^2}{8} \\[5px] &= 46.2\ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

(2) 下段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_2 &= w_{x2} \cdot \frac{ℓ_1 + ℓ_2}{2} + \Delta N \\[5px] &= 98.13 \times \frac{4.50 + 4.50}{2} + 150 \\[5px] &= 591.6\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

<最大曲げモーメント>

$$ \begin{equation} \begin{split} M_{max2} &= \frac{w \cdot L_1^2}{8} \\[5px] &= \frac{5.00 \times 8.60^2}{8} \\[5px] &= 46.2\ \mathrm{kN・m} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

6-3. 応力度の照査(上段)

照査は、安定の照査のみで、せん断力の照査は行わない。

2つの照査式で行う。(H11道仮p50)

照査式(2-6-1)

$$ \begin{equation} \begin{split} \frac{\sigma_c}{\sigma_{caz}}+\frac{\sigma_{bcy}}{\sigma_{bagy}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{\sigma_{bao}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \leqq 1 \end{split} \nonumber \end{equation} $$

照査式(2-6-2)

$$ \sigma_c+\frac{\sigma_{bcy}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \leqq \sigma_{caℓ} \nonumber $$

ここに、

  • $\sigma_c$:照査する断面に作用する軸方向力による圧縮応力度(N/mm²)

    • $\displaystyle \sigma_c=\frac{N}{A}=\frac{861.5 \times 1,000}{104.80 \times 100}=82.2\ \mathrm{N/mm^2}$
  • $\sigma_{bcy}$:強軸まわりに作用する曲げモーメントによる曲げ圧縮応力度(N/mm²)

    • $\displaystyle \sigma_{bcy}=\frac{M_{max}}{Z}=\frac{46.2 \times 1,000,000}{1,150 \times 1,000}=40.2\ \mathrm{N/mm^2}$
  • $\sigma_{bcz}$:弱軸まわりに作用する曲げモーメントによる曲げ圧縮応力度(N/mm²)

    • $\displaystyle \sigma_{bcz}=0$
  • $\sigma_{caz}$:弱軸まわりの許容軸方向圧縮応力度(N/mm²)

    • ただし、$b ^\prime \leqq 13.1\ t ^\prime$ とする
    • $b ^\prime$:切ばりのフランジ片幅
      • $b ^\prime = ( 300-10)/2=145 \ \mathrm{mm}$
    • $t ^\prime$:切ばりのフランジ厚
      • $t ^\prime = 15 \ \mathrm{mm}$
    • $ℓ_z$:切ばりの弱軸まわりの座屈長(水平方向座屈長)
      • $ℓ_z=4.20 \ \mathrm{m}$(H11道仮p122より)
    • よって、弱軸の細長比は、
      • $\displaystyle \frac{ℓ_z}{r_z}=\frac{4.20 \times 1,000}{7.51 \times 10}=55.9$
    • よって、軸方向圧縮の計算式は、18<ℓ/r≦92 より(H11道仮p.47)
$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{caz}&=[140-0.82(ℓ/r_z-18)]\times 1.5\\[5px] &=[140-0.82(55.9-18)]\times1.5\\[5px] &=163.4\ \mathrm{N/mm^2} \end{split}\nonumber \end{equation} $$
  • $\sigma_{bagy}$:局部座屈を考慮しない強軸まわりの許容曲げ圧縮応力度(N/mm²)
    • ただし、$2A_c \geqq A_w$
    • $A_c$:圧縮フランジの総断面積
      • $A_c=300 \times 15 = 4,500\ \mathrm{mm^2}$
    • $A_w$:ウェブの総断面積
      • $A_w=(300 - 2 \times 15) \times 10 = 2,700\ \mathrm{mm^2}$
    • $ℓ_y$:フランジ間の固定間距離(鉛直方向座屈長)
      • $ℓ_y=8.60\ \mathrm{m}$(H11道仮p.122)
    • よって、$ℓ/b$は、
      • $\displaystyle \frac{ℓ_y}{b}=\frac{8.60 \times 1,000}{300}=28.7$
    • よって、曲げ圧縮縁の計算式は、4.5 <$ℓ/b$≦30より(H11道仮p47)
$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{bagy}&=\{140 - 2.4 ( ℓ_y / b - 4.5)\} \times 1.5\\[5px] &=\{140 - 2.4 ( 28.7 - 4.5)\} \times 1.5\\[5px] &=123.0 \ \mathrm{N/mm^2} \end{split} \nonumber \end{equation} $$
  • $\sigma_{ba0}$:局部座屈を考慮しない許容曲げ圧縮応力度の上限値
    • $\sigma_{ba0}=210 \ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p51)
  • $\sigma_{caℓ}$:圧縮応力を受ける自由突出板の局部座屈に対する許容応力度

    • $\sigma_{caℓ}=210 \ \mathrm{N/mm^2}$(H11道仮p51)
    • ただし、$b ^\prime \leqq 13.1\ t ^\prime$とする。
  • $\sigma_{eay}$, $\sigma_{eaz}$:それぞれ強軸および弱軸まわりのオイラー座屈応力度(N/mm²) (H11道仮p51)

    • $\displaystyle \sigma_{eay}=\frac{1,200,000}{(ℓ_1 ^\prime / r_y)^2}=\frac{1,200,000}{(8,600/129.0)^2}=\frac{1,200,000}{4,444.4}=270.0\ \mathrm{N/mm^2}$
    • $\displaystyle \sigma_{eaz}=\frac{1,200,000}{(ℓ_2 ^\prime / r_z)^2}=\frac{1,200,000}{(4,200/75.1)^2}=\frac{1,200,000}{3,127.7}=383.7\ \mathrm{N/mm^2}$
      • $ℓ ^\prime$:材料両端の支点条件より定まる有効座屈長(mm)
      • $ℓ_1 ^\prime=8.60 \times 1,000 = 8,600\ \mathrm{mm}$
      • $ℓ_2 ^\prime=4.20 \times 1,000 = 4,200\ \mathrm{mm}$
      • $r_y, r_z$:それぞれ強軸および弱軸まわりの断面二次半径(mm)
      • $r_y=12.90 \times 10 = 129.0\ \mathrm{mm}$
      • $r_z=7.51 \times 10 = 75.1\ \mathrm{mm}$

よって、
照査式(2-6-1)

$$ \begin{equation} \begin{split} \frac{\sigma_c}{\sigma_{caz}}&+\frac{\sigma_{bcy}}{\sigma_{bagy}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{\sigma_{bao}(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})}\\[5px] &= \frac{82.2}{163.4}+\frac{40.2}{123.0(1-\frac{82.2}{270.0})}+\frac{0.0}{210.0(1-\frac{82.2}{383.7})} \\[5px] &=0.50+0.47+0.00\\[5px] &=0.97\leqq 1 \ \ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

照査式(2-6-2)

$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_c&+\frac{\sigma_{bcy}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eay}})}+\frac{\sigma_{bcz}}{(1-\frac{\sigma_c}{\sigma_{eaz}})} \\[5px] &=82.2+\frac{40.2}{(1-\frac{82.2}{270.0})}+\frac{0.0}{(1-\frac{82.2}{383.7})} \\[5px] &=82.2+57.8+0.0 \\[5px] &=140.0 \leqq \sigma_{caℓ}=210.0 \ \ \mathrm{OK} \end{split} \nonumber \end{equation} $$

6-4. 応力度の照査(下段)

鋼材が上段と下段で同じであること、および、軸力が上段の方が大きいことから、下段の照査を省略する。

7. 火打ちの設計

7-1. 荷重の計算

荷重は、腹起しの設計で算出した「単位長さあたりの支保工反力」なので、

  • 上段 $w_{x1}=158.11 \ \mathrm{kN/m}$
  • 下段 $w_{x2}=98.13 \ \mathrm{kN/m}$

曲げモーメントおよび自重は、スパンが短いため無視する。

軸力は、「土圧」、「水圧」、および「温度変化に伴う軸力」を考慮する。

温度変化に伴う軸力増加は$\Delta N = 150 \ \mathrm{kN}$とする。

7-2. 断面力の計算

切ばりの水平間隔 $B=4.50 \ \mathrm{m}$

火打ちの腹起し方向の幅 $ℓ_2=1.50 \ \mathrm{m}$

火打ち間の幅 $ℓ_1 = B - 2 \cdot ℓ_2$ $= 4.50 - 2 \times 1.50$ $= 1.50\ \mathrm{m}$

火打ちの角度 $\theta =45 \ \mathrm{度}$

(1) 上段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_1 &= w_{x1} \cdot \frac{ℓ_1 + ℓ_2}{2} \cdot \frac{1}{\cos \theta} + \Delta N \\[5px] &= 158.11 \times \frac{1.50 + 1.50}{2} \times \frac{1}{0.71}+ 150 \\[5px] &= 485.4\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

(2) 下段

<軸力>

$$ \begin{equation} \begin{split} N_2 &= w_{x2} \cdot \frac{ℓ_1 + ℓ_2}{2} \cdot \frac{1}{\cos \theta} + \Delta N \\[5px] &= 98.13 \times \frac{1.50 + 1.50}{2} \times \frac{1}{0.71}+ 150 \\[5px] &= 358.2\ \mathrm{kN} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

7-3. 応力度の照査(上段)

  • $\sigma_c$:照査する断面に作用する軸方向力による圧縮応力度(N/mm²)
    • $\displaystyle \sigma_c=\frac{N}{A}=\frac{485.4 \times 1,000}{104.80 \times 100}=46.3\ \mathrm{N/mm^2}$
  • $\sigma_{ca}$:許容軸方向圧縮応力度(N/mm²)
    • $ℓ$:座屈長
      • $\displaystyle ℓ=\frac{ℓ_2-H /2}{\cos \theta} = \frac{1.50-0.35/2}{0.71}=1.87 \ \mathrm{m}$(H11道仮p122より)
      • ここで、$H$ は腹起しの高さ
    • よって、弱軸の細長比は、
      • $\displaystyle \frac{ℓ}{r_z}=\frac{1.87 \times 1,000}{7.51 \times 10}=25.0$
    • よって、軸方向圧縮の計算式は、18<ℓ/r≦92 より(H11道仮p.47)
$$ \begin{equation} \begin{split} \sigma_{ca}&=[140-0.82(ℓ/r_z-18)]\times 1.5\\[5px] &=[140-0.82(25.0-18)]\times1.5\\[5px] &=201.5\ \mathrm{N/mm^2} \end{split}\nonumber \end{equation} $$

よって、

$$ \sigma_c =46.3 \leqq \sigma_{ca}=201.5 \ \ \mathrm{OK} $$

7-4. 応力度の照査(下段)

鋼材が上段と下段で同じであること、および、軸力が上段の方が大きいことから、下段の照査を省略する。

エクセルブック

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