ヤング係数比
ヤング係数比とは?
ヤング係数比とは、鋼材(鉄筋)のヤング係数をコンクリートのヤング係数で除した値である。
計算式は次のとおり。
ここで、
- $n$:ヤング係数比
- $E_s$:鋼材(鉄筋)のヤング係数
- $E_c$:コンクリートのヤング係数
ヤング係数比が大きいと、曲げモーメントをうける鉄筋コンクリートにおいて、鉄筋の引張応力が大きくなり、コンクリートの圧縮応力が小さくなります。
ヤング係数比の計算値と設計に用いる値
一般的に、鋼材(鉄筋)のヤング係数は$E_s=2.0 \times 10^5 \ \ \mathrm{N/mm^2}$であり、コンクリートのヤング係数は設計基準強度で異なるものの$E_c=2.5 \times 10^4 \ \ \mathrm{N/mm^2}$程度となっています。
よって、計算値は概ね$n=8$となります。
ところが、鉄筋コンクリート構造物の断面決定や応力度計算では、これより大きい値を採用することがあります。
H24道路土工擁壁工指針(p77)では、設計に用いる値として$n=15$を採用しています。
これは、クリープの影響で、実際の変位が理論値より増大するためです。
詳しくは、一般社団法人日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」の「12 条 曲げ材の断面算定における基本仮定」が参考になります。
構造計算におけるヤング係数比の使い方
曲げモーメントをうける鉄筋コンクリートの断面計算において、中立軸比の計算式にヤング係数比は登場します。
矩形断面の場合、中立軸比を求める計算式は下記のとおりとなります。
ここで、
- $k$:中立軸比
- $n$:ヤング係数比
- $p$:引張鉄筋比
これは、土木学会のWebサイトで公開されている「コンクリート標準示方書」のうち、「昭和11年土木学会制定 鉄筋コンクリート標準示方書 解説」の「参考編」に記載されている計算式です。
なお、中立軸比$k$に有効高$d$を乗じると図のとおり中立軸の位置が計算されます。
具体的な設計例
「Excelで片持ばり式擁壁(重要度2)の設計計算 -直接基礎、逆T型擁壁-」の「4-1-3. 応力度算出と判定」にヤング係数比が登場します。